切望の果て 小西 | ナノ 幼い頃からキリシタンだった。
薬屋として堺一帯の商人をまとめていた父。父は、商人はキリシタンとなった方が南蛮人と交渉しやすいとキリシタンになり、僕もキリシタンとして洗礼を受けた。
幼い頃はよく分からなかったが、今となっては素晴らしい教えだと思ってる。

しかし、僕は純粋にキリシタンとして生きて行くことは出来なかった。

目の前にぶら下がった利益を見過ごすことが出来なかった。
利益を得る為に、他人にも自分にも沢山の嘘をついた。これは天下統一の為の聖戦だと、自分に言い訳して手を血に染めた。


いっその事、教えも何もかも捨てられればよかった。
でも、幼い頃に埋め込まれたそれは、既に捨てることの出来ないほどに自分の中に根付いていた。
かといって、自分の前にある利益も、手中にある財産や名誉を全て放棄することも、僕は出来ないのだ。


そんな自分に比べて加藤清正という男は正直で、真っ直ぐで、揺るぎない信念を持っていて。信じたものの為なら、命も惜しまないのだろう。
そんな彼と比べると自分がとてもちっぽけで、臆病で、卑怯で、醜く感じられる。
対面する度にそれを突きつけられた気がした。そんな彼のことが羨ましくて、羨ましくて、羨ましくて。

「だから僕はアイツが嫌いなんや。」

悔しくて、憎くて、殺してやりたい。
ぽつりと呟いた言葉は誰にも届くことはなく、風の音に掻き消された。



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切望の果て

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