居眠り注意報 吉川と水影 | ナノ 眠い。ひたすら、眠い。


午前中は精神強化の授業で、午後は教養。
精神強化の授業は体を動かすわけではないのに、身体強化の授業よりも疲れる。身体強化の授業も半端じゃないぐらい体を動かすのに、である。

以前、隊長にその事について質問したことがあった。そしたら、
「人間は普段、肉体によって精神体が守られており、直接的な刺激を受けることが少ない。故に精神体は外界から受信した言霊、態度といったー…」
と、長々しい話を聞かされたが俺や成瀬にはちんぷんかんぷんだった。
その様子が見てとれたのか、馬鹿には解らんだろうな、と一言。
ならそんなややこしく言うなと!(多分わざとだろうが。)

結局頭が混乱したままの俺達に、精神は直接的な攻撃を受けることが少ないから、元々あまり鍛えられていない。だから、精神を鍛えるときは普段使っている体を鍛えるより疲れる、ということだと思う。
と、葉山が後で教えてくれた。同期に頭の良いやつがいて本当によかった。しかもどっかの誰かと違っていいやつ。



まぁ、そんな訳でへとへとな状態で授業を受けているわけだ。眠くならないはずがない。
授業開始から30分。睡魔に負けそうな俺は、遂に船を漕ぎ始めてしまった。
たった3人しか居ない教室だ、見つからない方がおかしいと解っていながらも、である。

飛んできたのがチョークならまだ可愛い方だった。
が、実際に飛んできたのは派手な破裂音を立てて発射された鉛玉。俺の頬を掠め、後ろの壁へとめり込んでいた。

「…へ?」

眠気は吹っ飛んだが俺の思考がついていかない。
呆然としていた俺は、隊長のラリアットをまともに食らって倒れた。隊長が馬乗りになり、先程ぶっ放なしたであろう銃を俺の額にゴリゴリと押し付ける。
「貴様…講義中だというのに良い度胸だな。」
と、その時同じく、唖然としていた成瀬と葉山が我に返ったようで慌てて止めに入ってくれた。
た、助かった…。


二時間後、終了の鐘の音が聞こえたことで、一安心した。あの後、散々な仕打ちにあったが、これで今日の災厄も終わりだ。
机の上のものを片付けていると、隊長が目の前に立っていた。
これは…ヤバい。
そう思った瞬間に、ドン!と重量のある音を立て、俺の机の上に大量の紙やら本やらが置かれた。
「居眠りした分の罰則だ。この資料の中にある重要用語の試験をする。期限は三日。八割とれなければ心身訓練特別演習を実施する。」
覚悟しておけよ?と、滅多に拝めない隊長の華やかな笑顔に顔が引きつった。
その覚悟ってのは特別演習を受けること前提になってませんか、隊長。


その後、大量の資料を部屋に持ち帰ってきた俺を見て、事情を聞いた黒天は腹を抱えて大笑いしていた。
が、八割とれなかった時の話を聞きくと笑いがピタリと止まり、俺と同じく顔が引きつっていた。この演習、契約している妖魔も対象に入るからだ。

結果、黒天は珍しく俺の勉強に協力してくれることになったが、元々イタズラ好きのこいつのことである。いつまで持つやら…。
一つ溜め息をついて、俺は渡された資料を手に取った。



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