鉄の板と赤いタイル スギリエ | ナノ 意味怖パロ










「ごめん…ちょっと用事出来ちゃった。」

久しぶりのデートで早めのランチを食べていたとき、けたたましく鳴り響いたリエちゃんの携帯電話。
慌てて電話に出てからどんどん暗くなる顔を見て、これは今日のデートは打ちきりだな、と残念に思いつつも諦めはついていた。
「じゃあ、映画は今度にしようか?」
午後は映画を見に行こうか、なんて話していたが、先日公開したばかりの映画だ。別段急いで見る必要もない。
「ううん、今日見る!直ぐに終わるから…5時!5時に駅前のカフェにしよう!」
今日を逃せばしばらく会えない。
必死に食らいついてきたのは、少しでも一緒にいたいからだろう。僕だって同じだ。
必死な姿が可愛くて、思わず笑みが零れた。そんな僕に対して膨れっ面をするリエちゃんを、わかったわかったとたしなめる。


「直ぐ終わらせてくるから!ごめんね!」
お店を出て、直ぐに駆け出した彼女に手を降る。曲がり角に差し掛かり、こちらに振り返ると手を降った。
笑って手を降り返すと、角を曲がって姿が見えなくなった。
さて、時間までどうするか。
と、考えたその時。


「きゃあああああああ!!」


突然聞こえた悲鳴と轟音。
驚いて、何があったのかと悲鳴の聞こえた方へ向かった。
曲がり角のの直ぐ先には、真っ赤なタイルの上を陣取る巨大な分厚い鉄板と、その前にへたりこんだ女性がいた。
「何かあったんですか?大丈夫ですか?」
女性に話かけるが、驚き、混乱しているのか話ができない。

「大丈夫ですかー!」

上の方から声がかかり上を見ると、直ぐ脇の工事中のビルから作業服を着た人が顔を除かせていた。
成る程、この鉄板があそこから落ちたのか。
直ぐに作業員さんが降りてきて、事情を説明してくれた。
女性は吃驚して腰が抜けただけで、怪我はないとのこと。
あんなものが落ちたんだ、怪我人が出ていないのは不幸中の幸いといえるだろう。
ここにいては作業の邪魔になると思い、その場を作業員さんに任せて後にした。
待ち合わせは5時。時間になるまで街で遊ぶとしよう。


夕暮れに染まる頃、待ち合わせ場所である駅前に向かう。
リエちゃんの携帯に電話をかけてみたが、地下鉄に乗っているのか、電源を切っているのか、繋がらなかった。まぁ、待っていれば来るだろうと駅へとゆっくり歩みを進めた。
途中、先程の現場近くを通りがかる。そういえばどうなったんだろう、と気になり覗いてみた。
現場には野次馬が出来ており、人の隙間から除き込むと鉄板はまだ動かせていないようだった。あの板、重そうだもんな。
危ないからか近づかないようにしているのか、警官のような人が数人目についた。
野次馬の中に先程の女性を見つけたので、声をかけてみた。

「あの、さっきの方ですよね?」
「あ、先程はご迷惑おかけしました。」
女性は丁寧なお辞儀をしてきた。接客業でもしているのだろうか。
「いえいえ、構いませんよ。先程は驚かれたでしょう。」
女性は顔を蒼白させ、こう返した。


「はい。悲鳴を聞いたときは本当に吃驚しました。」



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鉄の板と赤いタイル 解説

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