親愛なる君との最悪の再会 マサムネ | ナノ 闇夜にのまれた町並み。闇は音を飲み込み、姿を隠す。その闇を利用し、猫のように獲物へと近づく。

見張り一人。庶民から金を巻き上げて小金を貯めこんでいる大名家にしては少ない。こんな頼りない警備を見ると、知恵が無いと公言しているようなものであり、思わず鼻で笑う。交代者は居ないのか、まだ交代の時間ではないのか。定かではないが、見張りはこくり、こくりと船を漕いでいる。部下の一人が黒猫の様にするりと忍び寄り首元にぷすり、と針を刺す。首が完全に落ちた。部下が頷いたのを確認し、すやすやと寝息を立てる見張りの横をごゆっくり、なーんて声をかけ、通り抜ける。後は獲物のある蔵へと一気に駆け抜ける。
道具を使い蔵の鍵を解錠。細かい作業は苦手な為、素直に部下に任せる。本当は銃をぶっ放して解錠してもかまわないんだが、まだ仕事が済んでいない。仕事が終わらない内に見つかるのは面倒だ。

カチャン

「開きました。」
「上出来、とっとと中の物持って行って派手にずらかるぜ。」
部下に獲物を回収と見張り、逃走経路の確保など、事前に調べておいたことを元に細かく指示する。金、銀、壺、米、茶器、絹…。金になりそうなものを蔵から手際よく運び出し、がらんどうになった蔵を見回す。蔵の主がこの有様を見た時の様子を思い浮かべ、ニヤリ、と思わず口が三日月形に歪む。筆と墨の入った竹筒を取り出し、壁に黒々と
『暗闇烏参上!!』
の文字を残す。後は空砲を2、3発、蔵で鳴らしていつもの様に派手に逃げるだけ。そのはずだった。


空砲を鳴らそうとした瞬間、蔵の外から銃声が鳴り響いた。一発ではなく、2、3、4、5、とその数は凄まじいスピードでカウントされていく。刀で打ち合う金属音が彼方此方で聞こえた。
「ちっ、見つかったか。」
表へ出ると純白の軍服を着た連中とうちの連中が刀や銃で競り合っていた。純白の服なんて趣味の悪ぃ連中、この家の人間ではないな。警備の手薄さは劣りか、クソ!俺様としたことが!
周囲の状況を見渡し、怪我人の確認。幸い動けない奴は居ない様だ。

「なるべく傷を負うんじゃねぇぞ!予定経路から速やかに撤退!ここは俺様だけで十分だ!」

機関銃に弾丸を装填。俺の身を案じてか側近はその場に残る。俺だけで十分だって言ってんのに、困った連中だ。部下が風の如く引くと同時に奴らの足元に威嚇射撃として弾丸を打ち込む。ところが、連中は怯むどころか此方へ突出してきた。ちっと舌を鳴らし機関銃から拳銃に持ち替え、武器を持っている利き手や足を狙う。弾を打ち込まれた手足からバチンッ!という派手な破裂音が響く。
「!…こいつら、機械人形か!」
義賊として無闇に人の命を奪うことはしないが、機械人形なら容赦する必要はねぇ。再度機関銃に持ち替え、核が有ると思われる中心部、頭部を狙い鉛の雨を降らせる。頭や手足を失いながらも此方へ駆けてくる機械人形。しかし、胸部に被弾した機械人形が抵抗することなく地面へ崩れ落ちた。
「頭領!核は胸部中央です!」
「おし!」
側近の報告に基づき、胸部に狙いを定め乱射する。弾が切れれば、ハンマー、鉄球を取り出し、叩き潰していく。側近の連中も拳銃や機関銃、刀で応戦している。火薬による破裂音と刀による金属音の協和音が闇夜に音を奏でた。


「流石、俺様すっげー。」
ひゅっと口笛を一吹きする。
辺りは静まり返り、機械人形だったものの瓦礫が地面を覆い尽くした。はみ出したコードから出るバチリ、という電気の音が彼方此方で聞こえる。全ての機械人形を破壊したが、かなりの数だ。どこかに近くに統率者が居るはずだ。そう思案した時、後ろからぱちぱちと柏手の音が聞こえ、月光で延ばされた影が現れた。
「お見事、やはり量産型の試作品ではお遊びぐらいにしかならないかな?」
聞き覚えのある声に目を見張った。どうして、お前が、此処に、何故。何かの間違いであってほしいと顔を上げたことに俺は後悔した。

「こんばんわ。久しぶりだね、私の世界の半分サン。」

純白の服を着込み、闇夜に浮かぶ月よりも禍々しく口を歪めたのは、間違いなく俺の世界の半分だった。



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親愛なる君との最悪の再会

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