皆、笑顔で春を迎える | ナノ 全員集合
(兵助→孫六)



嵐が去ったのもつかの間、閉めた襖は再び開かれた。
「おぉ、思った通りここは暖かいぞ。」
「…寒い。」
と、現れた助作と甚内が中へ入ろうとする。
しかし、中に足を踏み入れる前に、助右衛門によって二人は中に入ることを遮られた。
「助右衛門?」
「え、何、中入っちゃ不味い?」
戸惑う甚内と助作を他所に、助右衛門はにっこりと微笑む。

「その雪まみれ泥まみれのままで畳に上げると思ったか?」

とっとと風呂に行ってこい、と笑顔で言い渡すとピシャリと襖を閉めた。白熱した雪合戦のため、泥だらけになっていた二人は助右衛門の言うことも最もだということで、風呂へと向かう追うとする。
と、向かいから権平と孫六がやって来た。
「作にぃと甚にぃ、泥まみれ。」
その言葉に助作はそうなんだ、とクスリと笑う。助右衛門の部屋は暖かいと教えてやると、二人は風呂へと向かった。


恐る恐る、と言うようにそろりと襖が開けられる。
「すみません、あの、少しだけ暖をとらせてもらって良いですか?」
控え目に顔を除かせたのは権平だった。孫六だけでも、と言う彼はいつまでたっても年上の彼らに慣れないようだった。
「少しと言わず、ここに居ても構わないよ。入りなさい。」
笑顔で促すと、嬉しそうに入ってきた。

市松や虎之助の時とは反対に、二人の顔は真っ赤になっていた。特に雪細工を作っていた孫六は手まで真っ赤に染まっている。
「孫六、手が真っ赤じゃないか!」
その痛ましい姿、兵助は思わず己の手で手を包んだ。暖める様に手を擦り合わせるが、今度は兵助が真っ赤になり、すぐに手を離してしまった。
「あ、あそこに、火鉢があるから、そこで暖めろ。」
そんな兵助の反応に孫六は首をかしげるが、素直に権平をつれて火鉢の前に移動した。
兵助も兵助で、いつまでもたっても慣れないなぁ、と助右衛門は苦笑いをした。


風呂組が上がって戻ってくると、広い部屋も直ぐにその広さを感じなくなる。
「お、皆揃っておるようじゃの。」
ガヤガヤと騒ぎ立てる部屋にやって来たのは紀之介だった。
「やぁ紀之介、いらっしゃい。佐吉もいるんだろう?」
はい、と答え紀之介と共に佐吉も中に入る。紀之介は鍋を、佐吉はお椀と箸を抱えていた。

「紀にぃ、何それ?」
「おぉ、孫六。これはお汁粉じゃ!」
「働かざる者食うべからず、じゃなかったのか…。」
佐吉の呟きはざわめきに消え、溜め息をつくと人数分の食器を置く。
蓋を開けると甘い匂いが部屋に広がっていった。その甘い匂いに盛り上がっている様子を、助右衛門は微笑ましく見ていた。


(さて、ではお茶でもいれようかな。)



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END.

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