猫は炬燵から引きずり出され | ナノ 佐吉と紀之介



昨夜降り続いた雪は今朝の冷え込みにより溶けることはなく、辺り一帯は雪化粧で覆われていた。
しかし、佐吉はそんな幻想的世界は眼中に無い、と言うかのように部屋を火鉢で暖め本を読んでいた。

「いやー虎と市松は元気なもんじゃのう。」
先程、部屋に転がり込んできた紀之介は暖められた部屋にゴロリと寝転んでいる。
「雪の中、二人して槍持って駆け回っておったわ。」
「馬鹿は風邪を引ないからな。」
と皮肉な笑みを浮かべる佐吉に、紀之介は思わず苦笑いした。


その時、

「紀之介ーおるかえー?」
「! はい、ここに!」
廊下から寧々の声が聞こえ、紀之介は急いで身を起こし廊下へと駆け出した。襖を閉めずに駆け出したため、みるみる部屋が冷え込んでいく。
(寒いのだからせめて襖を閉めていけ。)
佐吉はため息をつき、開け放たれたままの襖を閉めようと立ち上がる。
すると、紀之介が戻って来た。

「紀之介、襖は閉めていけ。」
「そんなことは後じゃ後!佐吉、はよう火の始末じゃ!」

目を輝かせている紀之介に顔がひきつる。嫌な予感がし、襖を閉めようとするが遅かった。閉めようとする前に紀之介が侵入し、火鉢の火を消してしまった。
「お寧々様が良い小豆を頂いたそうな。今からお汁粉を作るから手伝って欲しいそうじゃ。」
紀之介は大の甘い物好きである。こんなお願いをされたら断ることはないだろう。

が、
「待て、何故私まで巻き込む!」
「働かざる者食うべからず、行くぞ佐吉!」
問答無用で捕まれた腕が引っ張られ、佐吉はさらしたくもない冷気に身を震わせることとなった。


(私は甘いものは好きではないのに!)



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紀之介には敵わない佐吉。

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