06





最上階 屋上へつくと、わたしは屋上の端へ行き、かぶき町を見下ろす。










『あーあ、なんてちっぽけな街・・・』









こんな小さな町から出られないわたしは、もっともっとちっぽけな存在。










お兄さんからうばった傘をさしながら、わたしはただただその街を見下ろしていた。












『わたしだって運とお金さえあれば、こんなとこ・・・』













「残念だけど、もう君に運は残っていないと思うよ」













ハッとして後ろを振り向くと、さっきのお兄さんがにこにこ笑いながらそこへ立っていた。











なぜだろう、笑っているはずなのに、おぞましいほどの恐怖がわたしを襲う。









「いたずらが過ぎたね」










ゴクリと息を呑むわたしに近づき、お兄さんはそっと傘を手に取った。














「夜兎から傘を奪うなって、お母さんに教わらなかった?」














“夜兎”






その言葉にハッとする。












桃色の三つ編み。





蒼い瞳。






夜兎族。










わたしは、そいつを知っていた。
















『夜兎族・・・春雨師団長・・・神威・・・ッ?!』

















「へえ、俺のこと知ってるんだ?」









いつの間にか有名人だなー俺、そういってわざとらしく頭をかく。















「今更後悔しても遅いよ」











ゆっくりと近寄るそいつから距離をとろうと後ろへ1歩下がる。










わたしは、空中を踏んだ。











ガクンという衝動のあとに、小さくなるそいつのいやらしい笑顔が見えた。





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