真夜中、屯所の中は静かだ。
もうすぐ秋だというのに、まだ夜はなんだか蒸し暑い。
鈴虫の鳴き声でわたしは目を覚ましてしまった。
時計をみると、2時半すぎ。
まだ起きるまでに3時間くらいあるのに。
もったいないことをしてしまった。
夜風を入れるために、襖を少し開けようと立ち上がる。
すると、中庭に1つの黒い影。
『・・・?』
わたしは目が悪いので、目を細めてそれを見つめた。
すると近づいてくる黒い影。
『・・・沖田さん・・・?ですか?』
やっと顔が見える距離に近づいた。
が、その顔は布で隠れていて、目しか確認することはできなかった。
「おやおや、屯所の奴らは全員催眠ガスで眠ったと思っていましたが、効かないネズミもいたんですね」
『・・・!!』
この人、絶対悪い人だ・・・!
詳しいことはわからないが、その台詞、その姿、絶対悪い人だ・・・!!
『・・・あなた、敵ですね?』
「まあ、差し詰めそんなところですかね」
『そうですか。じゃあ、わたしは眠いのでこれで失礼します』
「あぁ、おやすみなさい。・・・ってなるかー!!!お前は人質だ!」
『ギャー!!!沖田さーん!!!たすけ・・・っうぐ!』
沖田さん呼ぼうと大声を出したら、途中で口を塞がれてしまった。
「そんなことしてもムダですよ、屯所内にいるネズミたちは、全員催眠ガスで眠ってますから」
朝まではぐっすりですよ、と楽しそうにわらう男。
わたしはその目にぞっとしてしまった。
人間とは思えないほど、冷酷な目をしていたから。
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