つれてこられたのは、屯所の裏側の塀



ここ?という顔をしていると、「上りなせェ」といって、塀に上がるようにいわれた


『はしごがないと上れないよ』

とわたしがいうと、チッっと舌打ちをしながらはしごを持ってきてくれた


なんだか今日は、やさしい









『塀の屋根に座るなんて、猫になったみたーい』

はじめての体験に、ちょっとワクワクしているわたし


「アンタが猫になったら、屋根が壊れちまいまさァ」



『そうやっていじわるゆうー・・・』



ぷくっとほっぺを膨らますと、「かわいくない」といって、ほっぺを思いっきりつぶされる


『い、いたい・・・っ』



意外につよくつぶされて、口の中がちょっと切れた気がするんだけど、これ

手加減してよっ





「ほら、そんなぶさいくな顔してないで、上をみなせェ」



ムっとしながら、空を見上げると



― ドーン


大輪の花火が打ちあがった






パラパラと散っていく花火と、その横を流れる天の川




それがなんともきれいで


まるで散っていく花火が、天の川からこぼれる星のようにも見えた





『・・・きれい』




「だろィ」





得意げに笑う総ちゃん









(やっぱり総ちゃん、きれーな顔してるなー)








そんなことを考えていると


「あ、菊子、頭に蛾がとまってやすぜ」



『?!』


え!うそ!蛾?!


『ちょ、総ちゃ、とって!とって!!!!!』



「わーったから、あばれるなって、落ちる」




落ちるのは嫌なので、おとなしくするわたし



わたしの頭に手を伸ばす総ちゃん




え、総ちゃん、蛾を素手で・・・?!





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