『あーぶとさん!』
廊下を歩いていると、阿伏兎さんの後姿が見えたので、わたしは声をかけてみた。
んー?とだるそうに振り向く阿伏兎さんの手は、大量の資料。
『あれ、お仕事中ですか?』
「今この中でヒマなのはお前さんくらいだよ、すっとこどっこい」
『えー、ヒマなのは団長も一緒ですよ!今頃なにしてるんでしょうねー?』
「ったく、お前さんは2言目には団長だ。挫けず追いかけるねェ・・・」
半ば呆れ顔の阿伏兎さんだが、わたしはえへへと笑ってみせる。
それをみて、若いねェ・・・と言いながら歩き始めた阿伏兎さんを、私は追いかける。
「なんだよ。俺はこれからこの資料をまとめなきゃならねェ、お前さんと遊んでるヒマはないんだよ」
『ちがいます!手伝おうと思って!』
その言葉を聞いた阿伏兎さんは、あからさまに嫌そうな顔をした。
『ぶあ!なんですかその顔!』
「やめとけやめとけ。お前さんにはやらせんぞ」
『えー!わたし、結構頑張り屋さんなんですよっ』
「だからいってんだろーが、すっとこどっこい。頑張りすぎて月子が倒れたら、俺が団長に殺されちまう」
休めるときは休んどけ、頭と身体使うのはおじさんの仕事だからな、といってククっと笑った。
わたしもつられて笑う。
「なーに笑ってんだ」
『いや、阿伏兎さんのそういうとこ、すきだなあと思って』
「はあ?」
『色々優しくしてくれて、うれしいんです!』
「俺はお前に優しくしてやったつもりはねェよ」
『そーいうところもすきです』
「あーはいはい、月子様に好かれてとても嬉しいですよわたくしは」
『あはは』
そんな会話をしていると、阿伏兎さんの顔が突然青ざめた。
『? どしたんですか?』
「今の・・・、いや、なんでもねェ。早く部屋に戻れ」
『え?手伝いますよ?』
「いーから、おじさんのいうことききなさい」
『はーい・・・』
阿伏兎さん、いきなりどうしたんだろう。
あ、後で阿伏兎さんに夜食差し入れしよ!
わたしはパタパタと自室へ足を進めた。
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