入団当初に、一度だけ団長に嘘をついたことがある。



任務の当日に、熱が出た。


大切な任務だったので、わたしは無理をして小船に乗り込んだ。


団長に、きょうは元気ないね、どしたの?と聞かれたとき、とっさに、寝不足です、といった。


団長は、一拍おいて、そっか、とだけいって、笑っていた。






そこから先の記憶が無い。








次に記憶があるのは、ベットから見上げた団長の顔だった。


団長は笑顔で、だから大丈夫?ってきいたよね、といって、わたしのおでこに手をおいた。



ひやりとおでこの熱が奪われていくようだった。


そして、寝不足でこんな高熱にはならないよ、といった。





ああ、この人は最初からわかっていたんだ、とそのときに思った。







そこからだ、団長が何度も質問をしてくるようになったのは。











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