05
「ねーさくらちゃん、今日僕このお店に行きたいんだけどー」
『あ!ここわたしもいきたかったの!いこいこ!!』
「やったー!じゃあ放課後、下駄箱でまってるねー!」
『OK−!』
最近、渚とさくらが妙に仲がいい。
前から仲がいいのは知っていた。
幼い顔をして人懐っこい渚は、さくらのお気に入りだった。
歳が一つ下ということもあって、弟のように可愛がっている。
俺と幼馴染のさくらは、小さい頃から遊ぶときも一緒なわけで。
当然、俺と仲がいい渚やハルとも付き合いは長い。
ただ、前とは違う違和感を覚えたのは、俺の勘違いだろうか。
『あ、マコも今日空いてる?』
「だーめだよさくらちゃん!今日なんのために行くのかわかってる?」
『え?・・・あ!』
「ね!だから今日はマコちゃん抜きで行こー!」
オー!なんて右腕をあげながらはしゃいでいる渚。
俺がいっちゃいけない理由でもあるのか?
でもここで無理矢理ついていったら、
ここで理由を聞き出そうとしたら、
きっとさくらが困ってしまう。
俺は腑に落ちずにモヤモヤする気持ちを振り切って、精一杯の笑顔を作った。
「俺はいいから、二人でいってきなよ」
俺は、俺の気持ちより、さくらを優先したい。
さくらが楽しめれば、それでいいんだ。
(・・・渚にさくらをとられた感じがしてちょっと悔しいけど)
ふー、とひとつ息を吐いて、何を買おうかとはしゃいでいるさくらと渚を見ていた。
楽しそうに喋るさくらをみて、自然と顔もほころぶ。
そんなとき、授業の予鈴がなった。
『あ!わたし次体育だった!早く戻ろうマコ!』
そういって広げていた雑誌をとじて、慌てて教室を出て行くさくら。
俺もさくらの後を追いかけようと席を立つと、渚に名前を呼ばれた。
「マコちゃん!」
「ん?」
「いつまでも紳士のままだと、だれかに取られちゃうかもしれないよ?」
「えっ」
「たとえば、僕とかに」
「・・・なっ」
突然のことに、言葉がでてこなかった。
なんで俺がさくらのこと好きって知ってるんだ?
もしかして、渚もさくらのことが?
ぐるぐるといろんなことが頭を駆け巡ってうまくまとまらない。
必死に返す言葉を探していると、渚は笑顔でこういった。
「じゃあ、体育頑張って!」
遅刻しちゃうよーっ!と背中を押されながら、俺は教室を後にした。
何が起きているんだか、まだ頭が理解できない。
俺が感じた違和感はこれだったんだ。
さくらは誰のものでもない、だなんて勘違いしていた。
いつか、ゆっくりでいいから俺のこと好きになってくれたら、なんて思っていたのが間違いだった。
俺は、自分の鼓動が脳を揺らすのを感じた。
きみとの距離
(今日、マコ本当に大丈夫だったかなー)
(大丈夫じゃないと思うよー)
(えっうそ!)
(でも、こうでもしないとねーマコちゃんだからねー)
(なんのこと?)
(さくらちゃんはまだ知らなくていーの!)
(?)
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