絶対的守護





「恭弥ッ!!!」


己の名を叫んだ愛しい彼は、深い傷を負ってしまった。

自分の命よりも大切な恋人を守る為に、危険も顧みずに飛び込んだディーノ。

正直、ここまで追い詰められるとは思わなかった。
成長し、実力もある二人係りで抵抗しようにも、敵の数が多すぎたのだ。
幾ら殴り殺しても減っているのかすらわからない。

次第に体力を奪われていき、ディーノよりも先に雲雀の息が切れ始めた。
そんな隙を突いた、敵の攻撃。
それは真っ直ぐにディーノの腹部を貫いて、愛しい恋人の身体をどさりと崩した。
その隙を逃すまいと無数の銃弾が撃ち込められ、ディーノの身体を庇うように獲物を振るうけれど、正直、雲雀だって既にボロボロなのだ。
けれど、ここで止まってしまえば二人共野垂れ死ぬだけ。

何より、ディーノを死なせたくはなかった。
沢山の人に愛されて、太陽のような眩しい笑顔をするディーノ。
きっと、沢山の人が悲しむだろうから。
だから、愛しい彼を守る為にも、雲雀はここで立ち止まっているわけにはいかなかった。



「っ、…ディーノ、ちゃんと掴まってなよ…」


無数の銃弾の中を驚異的な速さで駆け抜けていく雲雀。
全身全霊を掛けた雲雀の脱出は、なんとか敵の攻撃から抜け出す事が出来た。
半ば意識も朦朧としながら腹部の激痛や身体中が軋む痛みに耐えながら、なんとかディーノは意識を保つ。
ただ、荒い息を吐いて言葉すらも口に出来ないようなそんな状態。

深い傷を負ったらしいディーノの身体を肩で支えながら、雲雀は懸命に森の奥へと足を進めていった。










































「ここで待っててよ。外には出ないで」


森の奥にひっそりと建つ古い小屋を運良く見付け、人気の無い部屋へ足を踏み入れていくと丁度ベッドらしき場所があった為に、ディーノをそこへ寝かせて雲雀は静かに声を掛けた。

とにかく、腹の出血を少しでも抑えたい。
そう考えて、雲雀は赤く染まるディーノのTシャツを捲り上げ、隙間無く締めていた己のネクタイを乱暴に抜き取った。
包帯代わりには力不足であるそれをディーノの腹に巻き付けて、息が苦しくない程度の強さでキツく締める。
それから水を汲めそうな器を探して、然程遠くない場所で綺麗な湧水を見付けた。
それを器に溜めながら、常に周りの気配を警戒する。

逃げたといえど、いつ何時敵に見付かるかわからない。
キャバッローネのボスであるディーノと知りながら攻撃をしてくる所を見ると、敵対マフィアかその関係者。
久しぶりの休日という日で不意を突いたのだろうけれど、雲雀が居るとは予想外だったらしくリーダーたる人物が困惑した表情を浮かべていた事を思い出す。

丁度良い量になってきた器を見て、雲雀はさっさと小屋へと戻っていった。



「ディーノ…」


穏やかな声音で声を掛けたはいいけれど、どうもディーノの息遣いが気になる。
ベッド脇へと来て、サイドテーブルに器を置くとディーノの額へ掌を当てた。



「…熱か」


幸い酷い所までは来ていないものの、きっとこのままでは悪化するに決まっている。
そう考えて、雲雀は直ぐにディーノの身体を拭き始め、辛そうに眉を寄せる愛しい姿に小さく目を細めた。

身体を冷やさないようにディーノの上着のジッパーを留め、己のスーツをその上へ掛けてやる。
そして今一度濡らした冷たい布を、ディーノの額へそっと置いた。



「お腹空いたね、ディーノ…」


このままではディーノの体力が減り続けるだけだ。
そう考えて小屋の中を隈無く探したのだけれど、やはり食べられそうな物は何一つも無い。
こんな時に、晴の波動が少しでもあればと雲雀は己を恨んだ。

ベッドの上で苦しそうに顔を歪めるディーノ。
そんな姿、あまり見たいものではない。
普段からディーノに対して殺したいだとかいたぶるのが良いんだとか、そういう言葉を口にしているけれど、それは本心からではなくて一つの愛情表現。
それをディーノはわかってくれている。
だからそんな言葉も嬉しそうに受け止めてくれるのだ。



「死んだら許さないからね」


目を細めて告げた言葉は、初めて素直に口にできた気がする。
愛しい人に死んで欲しいなんて、誰が本心から思うだろうか。

本当は、早くあの鬱陶しい笑顔が見たかった。
眩しくて温かな、ディーノの笑顔。
それは10年経った今でも変わらない。



「…ょ、や……」


静かにディーノを見詰めていた雲雀の耳へ、微かな声が聞こえた。
思わずハッとして目を見開くものの、どうやら譫言らしくディーノは苦し気に眉を寄せて雲雀の名を口にする。
夢でも見ているのだろうと口元を緩めながら、一晩ここで過ごす事を決めた。

明日になったらここから離れよう。
そう決めて、薄暗くなり始めた夕焼けの空を静かに見詰めた。








........end

siberian様へ


お待たせ致しました!
自分を庇って負傷したディーノを懸命に助けようとする雲雀。
というリクエストを下さいましたが、リクエストにしては短すぎてしまい、本当に申し訳ないと思います…
全てはわたしの未熟さ故の失態です。
どうか、このような不躾な野郎をお見逃しくださいますと幸いです;;
本当に申し訳ありません…

中々書かないようなリクエストを頂きまして、自分にも刺激になりました。
もっともっと勉強をして、様々な設定やネタで書けるように精進したいと思います。

一応舞台は10年後設定ですが、なんだか内容が薄くて申し訳ないです;

このような稚拙な文ではありますが、どうか目をお通しくださいますと幸いです。
書き直し等のご要望がございましたら遠慮なく仰ってください…!



この度は素敵なリクエストをありがとうございました!


管理人:皇






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