一人の男が悲鳴を上げた。全く下品な声だ。男からどうしてそんな声が出るかが、私には解らない。私の直ぐ横にいるきり丸は、あんなに綺麗な美声なのに。あぁ、きり丸だからか。そうかそうか、きり丸は特別だからね「乱太郎」

きり丸が私の左手首を掴む。ちなみに今、私の右手には血のついた苦無がおさまっている。血はもちろん、今左腕を懸命に押さえながら倒れている男のものだ。「早く苦無、しまえよ。忍者だってばれちまうだろ」きり丸は頭に被っていた布をとり、それで私の苦無を包み込んだ。せっかくきり丸に合っている綺麗な布なのに、あんな男の血液がついてしまった。勿体ない。「きりちゃん、きりちゃん大丈夫?」
「俺は平気だよ。だからこんな奴、相手にしちゃ駄目だろ」
「だってこの人、きりちゃんを私から取ろうとしたんだよ?いくら今、女装してて可愛いからって、学園の人でもないのに」
きり丸は苦無の入った布を自身の着物にしまい込んだ。さぁ、行こう。きり丸が私の手を引っ張る。私はただ、ただ、嬉しかった。すでに悲鳴は、私の耳には届いていなかった。



私が守ってあげるからね。










乱太郎がこうも変わってしまったのはいつからだろう。下級生の頃はただ話しているだけで楽しかったのに、今は俺がいないと全然駄目で、すべてが終わってしまったようになる。今日だってただ女と間違われて手を引っ張られただけなのに、そいつの腕を切り落とした。


「だってこの人、きりちゃんを私から取ろうとしたんだよ?」


自分で言うのも変なことだが、乱太郎は俺に依存しすぎているんだ。愛して、愛し過ぎて、愛され過ぎて。まぁ、そういう俺も乱太郎がいなきゃただの人なんだけれど。




Title:自慰
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