「まったく、保健室の薬も少ないんですから。穴に落ちたくらいで怪我しないで下さいよ」


ぶつぶつと呟きながら、左近は私の右腕に包帯を巻く。
現在私は保健室にいる。気分でふらふらしに来たわけではない。焔硝蔵から帰る途中、穴に落ちたのだ。不覚。きっとあれは喜八郎が掘ったものだろう。後で文句言ってやろ。
だがしかし、そんなことはどうでもいい。私は二年に……敬語を使われている!
皆が皆、私にタメ口なわけでもないが、委員会が一緒な久作、何故かよく会う生意気な池田にはバンバンタメ口で話されるため、敬語を使われることに感動してしまう。


「なに笑ってるんですか気持ち悪い」
「いやぁ、左近はいい子だなと思って」
「また三郎次と何かあったんですか」


呆れた、と言いながらギュッと包帯を縛った。キツすぎだよ左近。左近はため息をつきながら片付けを始めた。そんなことしたら、少ない幸運が逃げてしまうのではないだろうか。


「本当に二人共素直じゃないんだから」
「何か言った?」
「いえ。先輩は身長通り心も小さい方だなと」
「思い切り言ってんじゃん。傷つくよ私」


どうしよう、左近まで酷い事言い出した。私に優しくしてくれる後輩がまったくいなくなってしまったら……。あと残りはしろちゃんくらいだ。いつもはぼうっとしているが、あの子は礼儀がなっているしっかりした子なのだ。やばいしろちゃんに会いたくなってきた。あの天使のオーラを分けてほしい。


「左近私はしろちゃんに会ってくる!しろちゃんんんん!!」

「左近ー手当てしてっっ!?」

「あ、四郎兵衛」


まさかの展開。私が外へ出ようとした瞬間、扉が開いて傷だらけの四郎兵衛が入ろうとしてきた。出会い頭に衝突するとはまさにこのことだ。
そして私は四郎兵衛と一緒に本日二回目の治療を受けることになる。
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