いつのまにか私は彼の腕の中にいた。紫がかった美しく綺麗な髪が頬にあたり、くすぐったい。いつもは見慣れた白くて女のような身体が、とても大きく、たくましく見えてしょうがない。背中をさすってくれる仙蔵の手から彼の熱が伝わってくる。



「せん、ぞ?」


「案ずるな。お前には私がいる。皆がいる。だから、」



泣くな。

 そう言われて初めて気がついた。私は泣いていたのだ。ぼろぼろと眼にためていたものが溢れだす。頬をつたり、地面を濡らしていく。私は仙蔵の忍装束をぐっと掴んだ。



「…あり、がとう。ありがとう。ありがとう」


 まるで子供が叫ぶようにお礼の言葉を連呼する。
 そんな私の頭を誰かが撫でた。涙を流しながら上を向くと、そこには小平太がいた。小平太はいつものような笑顔ではなかった。笑顔は笑顔でも、少し悲しそうで、私はこんな小平太はみたくない。
 あぁ、いつも元気な彼をこんな顔にしてしまったのは、私のせいか。私が泣いてしまっているからか。
 私は袖でごしごしと涙まみれになった顔を拭った。

 ふきおわった後の私の手を、伊作が包んできた。少し驚いたが、振り払う、なんてことはしなかった。温かい。とっても。



「名前ちゃん。名前ちゃんは一人じゃないんだよ?僕らがいる。ね?僕らは、仲間なんだよ」



 そう言うと、伊作はゆっくり微笑んだ。伊作だけではない。そこには、文次郎、長次、留三郎もいた。皆、悲しそうに微笑んでいた。私の手を包みこむ伊作の手が、すごく温かくて優しくて、私が生きていることを実感させる。


 ……そうだ、私は何で一人で泣いているんだ。
 私は馬鹿だ。仙蔵も小平太も伊作も、文次郎も長次も留三郎もいるのに、何故私は、
 私は一人じゃないんだ。皆がいるんだ。あぁ、気づけなくてごめんなさい。本当にごめんなさい。








 ありがとう。
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