「雷蔵は今日も格好良いね。私、もっと雷蔵のこと好きになっちゃうよ」
「名前ちゃんも、今日も可愛いね」
「本当に?雷蔵に言われるとすごく嬉しいよ」



そこは、雷蔵に、じゃない。雷蔵にも、だろう。
抱きついてきた名前に僕は心の中で返事をした。


今の名前と僕を知らない人達が見たら、きっとただのバカップルだと思われるだろう。僕が名前のことを好きなことは確かだ。しかし、僕と名前は付き合っているわけではない。
彼女は博愛主義者だ。世界の人類全てに愛を注いでると自分で言っている。だから、今みたいに僕に抱きついたりしても何とも感じないらしい。前は頬に接吻だってされた。




「名前、僕のことどれくらい好き?」
「めっっちゃくちゃ好き」
「じゃあ僕と付き合おうよ」「え、駄目だよ。私は皆が好きなんだから」

明るい笑顔でへらへらと笑いだす。
そうだ、彼女は皆が好きなんだ。実際三郎やハチにも同じようなことをしているのを見かけたこともある。
僕が、彼女の特別になることなんて不可能なんだ。

そう、いっそ君が、




「ねぇ、名前は本当に博愛主義なの?」
「ははっ。雷蔵ったら、いきなりどうしたの?」
「だって僕からしたら、全てを平等に愛するなんて到底無理だから」

それを聞くと一瞬名前はきょとんとして、それから満面の笑みになって言った。

「雷蔵は私じゃないんだから当たり前じゃない」



私は本当に、皆を愛してるの。





僕の耳には、大好きな声につられそんな言葉が響いてきた。
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