「君ってとっても甘いね」


私から唇を離すと、ナッティーは焦点の合っていなさそうな目をこちらに向けて、ぼんやりとしながら言った。その顔は驚いたようにも、幸せそうにも見えて、私には彼が何を考えてるか全く読めない。
それに、いきなり名前を呼ばれて振り返ってみたら、またまたいきなりキスされて、やっと離れてくれたと思ったら、何を言ってるんだこいつは。



「……は?甘い?私が?」
「うん、君が、とっても」

表情を変えずにナッティーは私に顔を近付けてきた。なんという至近距離。口を半開きにしたままのナッティーからは、なんともいえない甘ったるい匂いがする。ほんとに、本当に、意味が分からない。私が甘いって、私は人間だ。人間に味なんてあるかもしれないけれどあるわけないし、甘い香りがするような香水をつけてるわけでも、彼のように甘いものを食べたわけもない。



「甘いよ。とってもとっても。さっき食べたチョコよりもマシュマロよりもキャンディよりも。カドルス達からもらったクッキーよりもプディングよりも。昨日食べたパイよりもケーキよりも」



先ほどよりも至福に満ちたように目を輝かせて、ナッティーは嬉しそうに言った。しかし、そんな甘ったるいお菓子よりも甘いなんて、ますます意味が分からない。しかもナッティーは、力を込めて私の両腕を爪が食い込むんじゃないかってくらい強く握っているため、私は身動きがとれない状態で痛みだけがどんどん浸透していく。



「あぁ、食べたいなあ。唇がこんなに甘いんだもん。きっと君はぜーんぶ甘いよね?食べたいなあ食べたいなあ食べたいなあ」


私は全身に、ぞわりと寒気が走った。ナッティーに突然私を食べたいなんて言われたことが原因ではない。ぐいっと、ナッティーがよりいっそう顔を近付けたと思うと、ぱくりと口を大きく開けたのだ。
何が起こったか、一瞬思考が追いつかなくて理解できなかった。私の視界にはナッティーの甘ったるいにおいがする緑色の髪がいっぱいに広がって、それと同時に私の身体に痛みが広がった。腕からじゃない、いや、腕の痛みなんてもうないようなものだった。



「あ、ぐぅっ………!?」

突然の衝撃で変な声が出てしまった。痛みのするほうを見ると、やはりナッティーの髪しか見えない。見えなくても分かった。私はナッティーに肩を噛まれていた。
軽いものではない、歯が深く突き刺さっているようだった。痛い、痛い、痛い。血も、流れていそうだ。
ナッティーを身体から剥がそうとしても腕には力が入らないし、私よりも身長の高いナッティーに抱き締められているため、動きたくても動けない。



「ナッ…ティ……」

「きっと美味しいよね。だって、君の身体だもん」



勘弁してよねナッティー。今日の死因が君に食べられた、なーんて恥ずかしいし馬鹿らしいじゃない。

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