お誕生日の伯爵さまっ♪
「やだ」
この一言で、
「わかった。今日は一緒にいようね」
愛する恋人と交わした約束が反故にされようとは思ってもみなかった。
誕生日。今までは単に一つ年をとるだけの日だった。
それが変わったのは、恋人のせい。
甘いもの好きの自分のために、あらん限りの甘味を用意してくれた。もう一人の主役も同じというのは気に食わなかったが、甘味は嬉しかった。
更には恋人がどうしても着てくれなかったプレゼント下着を着てくれるとなれば、喜びはひとしお。しかしこれがよもや過去の自分によって遮られようとは思いもよらなかった。
菓子を味わい尽くし、次は恋人を味わおうと小さな自分を後輩の家に預けようとした。が、それは当の本人によって却下された。誕生日なのに自分の恋人と離れるのは嫌だと駄々をこねたのだ。何を言っている、俺と恋人が夜を過ごすのは当たり前のことだろうと散々言って聞かせたのに、あろうことか恋人は了承してしまった。
ショックで言葉も出ない俺に、恋人は言った。
「明日、埋め合わせをするから。ね?なんなら二日間着てあげる!」
小さい頃の自分に弱い恋人は、そう言って手を合わせた。
滅多にない恋人からのおねだりと、ご褒美に、俺は渋々頷いたのである。
そして、当日。
「ああ、可愛いぞ。レン」
「は、恥ずかしいな・・・」
プレゼント下着とやらを身につけ、もじもじとする恋人をうっとりと眺める。
小さい自分は、小さい恋人と一緒に後輩の家に預けてきた。邪魔はいない。
あるのは、据え膳だけだ。
「レン。もっとこっちに来て、俺にちゃんと見せてみろ」
恋人は一瞬躊躇ってみせたものの、おずおずと近付いた。
胸は赤いリボンで隠れている。陰部もだ。だがそれだけ。綺麗にリボンでラッピングされたようになっており、それ以外は隠れていない。
いや、普通の下着より面積はある。しかし、自分をプレゼントとでもいうような下着は羞恥心を煽るものだ。
恋人が着るのなら羞恥も何もなく、可愛いの一言につきる。
「やはり思ったとおり。赤色はお前に映える」
「バロンのすけべ」
「ほう?」
少しむくれて見せる恋人の悪態は可愛いものだが、言葉は心外だ。欲望に忠実ではあるがそんなことを言われる筋合いはない。
寧ろ、
「お前のここは俺に見られて勃っているが?スケベな俺に見られて勃たせているお前はなんだ?」
「いじわる」
「そんなことはない。俺はお前を甘やかしたいんだから」
そう。いつだって恋人は可愛い。
砂糖菓子よりも甘たるく甘やかしてドロドロに蕩けさせたい。ドロドロに、チョコレートよりも蕩けたら一飲みにしてしまいたい。
「二日間、俺にくれるんだろう?」
「・・・うん」
「誕生日プレゼントを貰えなかったんだ。だから甘やかしてくれ」
「もう・・・バロンのバカ」
レンは俺の膝に乗り、ひとつキスを落とした。真っ赤な顔にむしゃぶりついてやりたくなったがすんでで堪えた。
「お誕生日おめでと。プレゼントをどうぞ」
「ああ、ありがとう」
知っているか。俺は甘やかすのも好きだが、お前になら甘やかされるのも好きなんだ。





「う、あ・・・」
密やかな水音が、宛ら耳のすぐそばで聞こえるようだ。
リボンの上からじわりと滲むような愛撫が犯していた。ぴちゃ、ぴちゃ、とわざと音を立てて舐めるくせに、一向に直には触れなかった。もどかしくもあり、切なくもある。触ってもいない陰嚢がドクドクと脈打ち、リボンの下で出せと暴れている。
「ばろ、触って・・・触って・・・」
「もう少し堪能させろ」
「ん、だって、・・・はやく、ね?」
「ダメだ」
素っ気なく返される答えは、望まないものだった。
指で突起以外の部分をコリコリと弄ばれる。本当は突起に触れて欲しいのに。
「お前のここはいつも尖っているな。いつでもそうなっているのか?準備がいいな」
「ちがっ」
「ならば、俺が触れるから?」
「っ、」
蠱惑的に笑む唇。舌が辿り、獲物を前にした獣のように狙いを定めた。
答えられない俺に、正解を知っているかのように。
「ここにリボンを巻くなら、可愛いこっちに結べばいいのに」
こっちと、弾かれる陰茎。反り返りかけているものに、直接の刺激が伝った。
太腿のリボンを冷たい手がなぞる。頬ずりし、愛おしむように焼け付くような視線が集まる。
「まあ、どこにつけようが可愛いことに変わりはないがな」
傲岸に放たれた言葉。真実そうだと言うような、熱のこもった視線。
胸を焼け焦がすような甘やかさ。
「バロン・・・おねがい」
「ふっ。今日は甘やかしてくれるんじゃなかったのか?」
「おねがい、バロン。ここ。ここが、切ないんだ・・・早く、オレの中でバロンを甘やかさせて。ね?」
ちっとも触れられやしなかった後孔を広げる。よく見えるように広げたそこは、甘やかす存在を求めてきゅうきゅうと啼いていた。
カミュは、瞳に炎を宿らせた。瞳の中の凍土が溶ける。
「合格だ」
瞬間、貫く熱塊。
「は、ぁああああっ」
「っく・・・」
一度も解されていないそこは、求めているものが手に入ったことに喜び、同時にキツく締め上げた。勿論入るわけがなく、浅く挿入しただけで止まった。
奥が疼く。
「ばろ、」
「そんなに締め付けるな」
「む、り・・・」
「ハッ、甘えん坊め」
それはこっちのセリフだ。と言ってやりたいのは山々だったが、いかんせん中にいる存在に気を取られてマトモな答えも返せない。
侵入は浅いくせに、容赦なく痛みを叩きつけてくる熱。熱いわ痛いわ快感に程遠い。
けれど、嫌ではないのだから末期なのだろう。
カミュはリボンを引っ張った。蟻の門渡りから、陰茎、後孔が締め付けられる。
「ああっ」
「ほら、腰を動かせ」
「ん、あっ」
ぺしぺしと尻を叩かれ、犬猫のように従った。
ゆっくりとリボンに恥部を擦り付ける。まるで目の前で自慰でもしているようだ。
引っ張られ、締め上げる快感と擦り付ける快感が混じる。浅く中を犯す熱とが混ざり、下半身から熱が広がっていく。
「ん、あ、あっ」
「恋人の前で一人遊びとはいただけんな」
「だ、だって、バロンが」
「腰を動かせとは言ったが、一人で気持ちよくなれと言った覚えはない」
「あァあああっ」
瞬間、奥へと侵入する熱塊。
だが、奥へは届かず、中途半端なところで止まる。
多分、切れている。痛みが走る。けれど、それが快感と混ざって変わっていく。
「レン」
「バロンッ」
滲む視界の中、手を伸ばすと絡め取られる。両手が合わさり、キスが降る。舌を絡めて、喉奥まで愛撫するような侵入者を喜んで出迎えた。
「レン」
「ん、あァああっ、あっ」
リボンを擦り付けて、陰茎が反り返った。その隙に奥深くへと侵入される。
中は早くと訴え、奥へと案内した。
埋まる充足感。胸を締め付ける切なさに、熱が焼け付くされそうだった。
「二日間、一度たりとても眠れると思うなよ」
不敵な笑みに、中が疼く。それが答えだった。
「いい返事だ」
「あ、あァあああ、あ、あっ」
初めから律動は早かった。抜いたかと思えば貫き、血さえも潤滑剤にして中を犯す。
「見ろ。リボンがお前色に染まっていく」
「や、やっ」
「何がだ?リボンが染まることか?それとも血が出ることか?」
「う、あっ」
「ああ、全部か」
クスッと、耳元で与えられる低い声。冷徹な声が熱く囁く。
蕩けてしまいそうだ。ラッピングされたチョコレートみたいに。
「ほら、乳首もお前の形だ」
「いやっ」
「嫌?誕生日なのに甘やかしてくれないのか?」
「う、ふぅっ」
恥ずかしくて、泣きたい。
ズルい。そんなこと言うなんて。逆らえなくなる呪文だ。
「レン、愛してる」
ズルい。
オレを黙らせるなんて。





「いあァあああ、やだぁっ、も、あァあああ!」
宣言通り、二日間寝かせては貰えなかった。意識を飛ばせば、快感で起こされる。強弱関係なく叩き起こされる。
そのため、二日間を過ぎる頃になっても泣き叫んでいた。
「も、いぎだぐな、やめっ」
顔は涙でぐちゃぐちゃ。フェミニストの顔が汚れていた。
「甘やかしてくれるのだろう?安心しろ、戻るまで愛してやる」
延長宣言に、レンは中を締め付けた。
「ふ、ここも悦んでるぞ」
「いァあああっ、や、やだ、あっ」
そして、使い物にならなくなっても尚酷使されたレンの後孔は暫く病院通いとなるのだった。
セックス禁止令が出され、完治後、カミュがまたもや酷使させて病院通いになるのは別の話。
     
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