虚実(ゆめ)
夢の中でなら、あなたは会ってくれるのに。










あなたは、優しい人。
オメガのオレにも心を開いて愛してくれる。優しく抱いて、愛を囁いてくれる。
あなたの腕の中にいるだけで、オレは嬉しくて。あなたを愛せたことを喜んでしまう。
「かーみゅ」
「どうした?」
「ううん、なんでもないっ」
「ふふ、いたずらっ子め」
「えへへ」
呼べば、振り向いてくれる。本を読んでいても、料理をしていても。必ず振り向いてくれる。
どうした、って言って、オレを見てくれる。
オレにはもったいないくらい優しい人。ずっとずっと大好き。
オレに突然発情期が来た時はビックリしたけど、カミュに出逢えて良かった。今ではカミュ以外が運命の番だったらオレはきっと逃げ出していた。
「ねぇ、カミュ」
「どうした、レン」
「今日はドライブしたいなぁ」
「ああ、いいぞ。何処へ行く?」
「んーとねぇ」
あなたと行くなら何処へでも。行き先がなくたっていい。ただ、ドライブするだけでいい。流れる景色を見ていたい。
「カミュは何処へ行きたい?」
「私は・・・そうだな。海はどうだ?」
「海!いいね、行こう!そう言えば、この前ステキなレストランが近くにある海を見つけたんだ」
「お望みのままに、マイプレシャス」
「ふふ」
車に乗り込んで、あなたが運転するドライブ。行き先は海。ステキなレストラン。
窓は全開。快晴の下、心地よい風に髪が靡く。オレンジ色と、あなたの髪色のクリーム色。絡まるような気がして、じっと見ているとクスクスと笑われて、オレも笑う。
途中でコンビニに寄って、飲み物を買う。オヤツとかは買わない。レストランに着くまでにお腹いっぱいになっちゃったら意味がないから。
二時間くらいかけて、目的の海へ。
まずはレストラン。お昼時も過ぎてガランとしている店内。窓際の席に案内される。
二人で腰掛けて、メニューを見る。海の食材をふんだんに使った料理に、お腹が鳴りそう。
「んー迷っちゃうな。全部美味しそう」
「全部頼むか?」
「そんなことしたら、沢山残しちゃうよ」
「私も、決められない」
「もう!」
やっと料理を決めて、舌鼓を打つ。新鮮な魚介類が、口の中で生きているみたい。
お腹いっぱいになったら、海へ。
砂浜を二人で歩く。
人もあまりいない海。
深呼吸して、うんとのびをする、海の新鮮な空気と潮風が鼻から入ってきた。
「きもちいー!」
「本当だな」
「水着持って来ればよかった」
「泳ぐつもりか?」
「だめ?」
「だめ」
ふわりと、包まれる身体。
「どこかへ行ってしまいそうだから」
「行かないよ?」
「それでも」
変なことを言うあなたに、思わず笑ってしまう。
浜辺を駆けて、波と競争。
「カミュ!」
「うん?」
「えい!」
「こらっ」
「えへへ。えーいっ」
「わっ」
水を足でかけると、折角の洋服が濡れてしまって。おかしくって、次々と水を仕掛ける。
「こら、捕まえた」
「わっ」
「このいたずらっ子め」
「わあっ」
「うわっ」
揃って二人で海の中に倒れる。浅瀬だから沈まないけど、洋服はすっかり濡れてしまって。パンツの中までぐっちょぐちょ。
「っぶ、あっはっはっは」
「ふふ、ははははっ」
お互いぐしょぐしょになって、おかしくって笑い合う。
抱き合いながら、また海へ。
もう濡れることが楽しくなって、日が沈むまで遊んだ。
「かーみゅ」
「ん?」
「寒いね」
「こっちにおいで」
「うんっ」
肩を抱かれて、あなたの胸に飛び込んだ。あなたの体温と重なり合って、凄く温かく感じる。
あったかい。
「ねぇ、カミュ」
「どうした?」
「ううん、なんでもない。・・・あったかいね」
「ああ、そうだな」
あなたはとても優しくて。オメガのオレにも優しくて、愛してくれて。
そして、
そして、
「ねぇ、カミュ」
それから、
「カミュ」
ぐにゃり。
世界が歪む。
ねぇ、知ってるよ。オレは、知ってる。
でも、ねぇ、いいでしょう?もうオレはここにいていいでしょう?
優しいあなたに愛されていたいよ。
「か、みゅ・・・」
ねぇ。
「さむい、よ」










夢の中でしか、あなたは会ってくれないのですか?
     
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