思い(なかま)
「・・・はぁ」
「一ノ瀬」
「あ、すみません」
「いや、構わない」
神宮寺レンが消えて、五年の月日が流れた。未だに音沙汰はない。
カミュに聞けば、元気だと応えてくれる。しかし、会わせようともしない。仕事に復帰することもない。
一体どうしているのか。心配が募るばかり。二人だけではない。メンバーも神宮寺レンの不在に戸惑いを隠せずにいる。
「レン抜きでこのまま活動を続けられません。ソロにも限界があります」
「しかし、カミュ先輩は復帰させるつもりがないようだ」
「何故です?レンのことを認めていたのに・・・!」
一ノ瀬トキヤは悔しかった。スターリッシュとして活動して、これからというときだった。神宮寺レンもアイドルとして高みを目指していた。
それなのに、オメガというだけで夢を諦めさせられなければならないのか。
「勝手すぎます!」
「一ノ瀬・・・」
聖川真斗とて同じ気持ちだ。だが、彼も同じアルファ。何れはオメガに同じ道を強いなければならない。
それに、跡継ぎを作ることは会社の未来を考えると必要なことだった。
しかし、
「そう、だな」
それでも、仲間をとられたくはなかった。勝手だと、ワガママだと責められようとも。ライバルだろうがなんだろうが、仲間なのだ。共に同じ道を歩んだ、欠けてはならない仲間。
聖川真斗は、拳を握った。しかし、どうしようもなかった。
財閥御曹司と雖も、相手は他国の伯爵。相手にならないだろう。そもそも聖川真斗はアイドル。相手もそれは同じ。だが、生きた年数からして異なる。
それにカミュは聖川真斗と違い、伯爵家の人間であることを捨ててはいない。つまり、伯爵家としても生きているのだ。財閥御曹司という肩書きを捨ても同然の聖川真斗では歯が立たない。
だが、諦めたくない。もう一度、あのライバルと顔を合わせて競い合いたい。同じ道を進みたい。
「なーに辛気くせぇツラしてんだ。真斗、トキヤ」
「く、黒崎先輩!」
「レイちゃんもいるよぉ」
「こ、寿さん!」
「ちょっと、僕のことは?」
「み、美風先輩っ?」
悩める王子の元に現れたのは、先達の王子。カルテットナイトの三人だった。
「なぜ、ここに・・・」
「あ?決まってんだろ。俺らの後輩を取り戻すためだよ」
「え・・・」
「そうそう!レンレンがいなくなって、トッキーもおとやんもしょんぼりしちゃってさ!ボクチンも寂しいし!」
「寿さん・・・」
「ま、那月と翔も仕事に力が入らないみたいだしね」
「美風先輩・・・」
たった三人なのに、千人力だ。
これほど先輩というものは頼もしいものなのだろうか。
「というわけで、レンレン奪還作戦にむけて作戦会議だぁ!」
     
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