絶望(ほうかい)
待っていたのは、絶望。










「ひぃいいいっ、あひ、あ、ひぃアアッ、はぁ、はぁ」
中を貫かれる感覚。
何回目かの中への絶頂に、オレも達した。
とぷん、とぷんと中で存在感を示す体液。
ここに、出されたんだ。ほうと息を吐く。
撫ぜた腹から熱が伝わってくるようだった。
そして、オレは意識を失った。
朝日で目が覚めた。
しかし、見覚えのない景色に目を瞠る。どこだ、ここは。
なんでこんなところに。
真っ白な部屋。壁も、天井も、窓も、ベッドも。シーツも。
自分の身体が目に入って、咄嗟に隠す。一糸纏わぬ裸体だった。別段気にすることはない。が、何故か隠してしまった。いつも裸で眠るのに。
「目が覚めたか」
「ば、ろん?」
白ばかりの部屋に現れたのは、先輩アイドルのカミュだった。一度シャッフルユニットを組んでから仲良くしている。
バロンと呼ぶたびに、バロンは男爵だと言われるのは最早日常。
「え、ここ、バロンのおうち?」
「覚えてないのか」
首を傾げるオレに、バロンは溜息をついた。
「お前のアルファはこの俺だ」
「え・・・」
「貴様には俺の子を産む義務がある」
そう言い置いて、バロンは去った。
混乱するオレを残して。
アルファは運命の相手であるオメガとしか子孫を残せない。生まれながらにして、将来を約束されていながらも、運命を定められている。だからアルファを羨むことはない。勿論、生まれながらにして才能がないオメガにも。
劇的に描かれるが、その実は子作りの道具でしかなかった。オレはそれが嫌だったし、何よりオメガであるという事実を恥じて、誰にも知られたくなくて抑制剤を飲んでいた。発情期を抑え、他の男に嬲られることを抑える薬。
今まではそれでなんとかなっていたはず。だが、何故突然オレがオメガであるとバレたのか。
よりにもよって、バロンのオメガだなんて。こんな酷いことはない。
「待って!」
開け放したドアの先に、バロンはいた。その視線は以前のようなものではなく、冷めたものだった。
「お、オレがバロンのオメガってどういうこと?お、オレがオメガだなんて・・・」
バロンは呆れたように息をついた。
その仕草に胸が痛む。
「言葉通りの意味に他ならないが?貴様が余計なものを飲んでいたせいで探すのに手間取ったが、昨日貴様が発情期となりやっと分かった」
「そ、んな・・・」
「信じたくなければ勝手にしろ。貴様には跡継ぎを産んでもらう。それさえ果たせば、後はどうとでもしろ」
「そんな、バロン!」
「黙れ。貴様に異論を許した覚えはない」
「バ、」
無情にも、ドアの向こうへ消えてしまう。
こんなことってない。運命の番に子供を産む道具だと宣言され、産んだら勝手にしろと言われるなんて。
「は、ははっ」
笑うしかない。
気のせいだ。頬を伝う雫なんて。
「こんな、ことって・・・」
本当に、こんなことってない。
好きな人に、子供を産むためだけの道具と言われるなんて。
それでも、この秘めた想いが冷めないなんて。なんの夢だ。
いいからさめて。夢からも、想いからも。
     
return
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -