そして、
それから、一年後。
「まったく。活動再開直後に休止ってなんなの?夏休みじゃないんだから」
「え、えへ?」
弁解の余地もなく、寿嶺二は可愛く笑って見せた。が、じろりと黙殺される。
寿嶺二の腕には、第一子がすやすやと眠っている。難産の末、帝王切開で産まれた可愛い我が子は男の子だった。
そして、
「やめてよね。こっちも漸く本腰入れたところに休止って外聞悪いし、スポンサー問題もあるんだからね」
「え、えへへ?」
「誤魔化さないで」
「すみませんでした」
寿嶺二の腹はふっくらとし、第二子の命が芽吹いている。
そう。第一子出産直後に活動再開し、間もなくして第二子を妊娠し、活動休止を余儀なくされたのである。
「まったく、蘭丸も蘭丸だよ。ホントに大丈夫なの?」
「あ、あははー」
寿嶺二は抵抗した。ユニット活動を再開したばかりだったし、散々迷惑をかけた手前気まずいものがあった。
しかし、夫黒崎蘭丸は実はかなり嫉妬深かった。妻として公認されているが、他人の目に触れさせることも嫌がり、まさかの本人がユニット活動を辞めたがったのだ。
カミュや美風藍が口を揃えて叱り飛ばす努力虚しく、ついに堪忍袋の尾が切れた黒崎蘭丸は寿嶺二の腹に命を宿した。
「男の嫉妬ほど見苦しいものはないって言うけどホント執念深いよね」
「は、はは・・・」
もはや取り繕う島もない。お腹に宿った命の手前、寿嶺二は弁明も解釈も出来ず視線を逸らすしか出来ない。背中にだらだらと冷や汗が流れる。
「まあまあ、アイミー。落ち着いて」
「レンは黙ってて」
ぴしゃりと黙殺されて、神宮寺レンは肩を竦めた。
「まったく揃いも揃って・・・」
「オレは引退したよ?」
「余計悪いよ」
「あ、あはは」
空笑いするしかない。
神宮寺レンは、カルテットナイトのカミュと番となり身篭った。寿嶺二と異なって、すっぱり芸能界は引退し、今では三つ子を筆頭に沢山の子を持つ母親である。
寿嶺二と違い、すっぱりきっぱり引退したよ身なだけあって反駁出来ない。
「カミュも人のこと言えないよね。自分だって年がら年中レン相手に盛りまくってるんだから」
「あ、アイミーの口から盛りまくるとか聞きたくなかったなー」
「何」
「イエナニモ」
触らぬ天使になんとやら。神宮寺レンは明後日を見た。
「まあまあ、アイアイ。今度なんか奢るから」
「それより早く復帰してくれる?」
「は、はい」
「・・・楽しみに、してたんだから」
「っ、分かった!もう夜のお勤めは中止!ランランよりアイアイに捧げちゃうよー!」
珍しい仲間のデレに悶えた。
その時。
「ほう?」
背後から聞こえた声に、寿嶺二は固まった。
「それはそれはいい覚悟だな?」
「ら、ランラン・・・」
「よし、いい機会だ。嶺二、どこまで我慢出来るか見ものだな」
「え、ちょっとまっ、あ、アイアイ、レンレン!たすけっ」
「頑張るんだよね?」
「あ、もしもしバロン?うん。分かった。えへへ、うん、待ってる。うん。だぁいすき」
「こ、この裏切り者ー!」
     
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