夢でさえあなたは現れてくれないのですね
まったく不器用な人だ。
僕なんかのために方々に頭下げて回って。そのくせ僕がいなくなることに怯えて子供まで作って。
でも、そのくらい必要とされなければ僕はここにいなかった。嬉しいって感情を知ることもなかった。
ぴょんぴょん飛び跳ねたタンポポ頭を久々に撫でた気がする。指をすり抜ける感触。
「ランラン、ありがと」
ずっと僕を思ってくれて。
僕を大事にしてくれて。
唇にキスを落として、眠りにつく彼を抱き締めて眠った。
起きたら何から話そうか。
今度はちゃんと目隠ししないで話そうよ。










この状況をなんと説明すべきか。
黒崎蘭丸は状況が把握出来ず、寝起きから頭を悩ませた。
昨晩は久々に仲間と飲んでいた。鬱憤がたまりまくっており、制止も聞かず浴びるように飲んだ記憶はある。
最愛の人を手に入れたはいいものの、いつ離れてしまうか分からなかった。死なせない、ただそのためだけに子供まで作った。それなのに、状況は一向に好転しなかった。どころか、帰るたびに儚く淡く微笑むようになった彼に罪悪感が募るばかり。
死なせてやったほうが良かったのか。
そう思うようになった。同時に、死なせたくないと心が泣き喚き、どうしようもなかった。
自分では救えないのだ。救ってやりたいのに、生かすことで彼を巣食う闇は広まるばかり。
「んー」
隣で眠っていた彼が、目を覚ます。
くりんくりんの茶色い髪がさらりと顔にかかる。手の甲でこしこしと目を擦る姿は幼さを残す。
覗いた茶色い目は、ぼんやりと映し、ふわりと笑う。
「おはよ、ランラン」
ふにゃりと、微笑む。
ずっと、見たかった笑顔が今目の前にある。諦めていた光景が、眼前に広がる。
夢だろうか。夢の続き。
いや、違う。
だって、
「どうしたの、ランラン」
彼の手が俺の手に触れる。
「れい、じ」
「うん?」
ずっと心ここに在らず、俺を見ることがなかった目が映す。
ああ、もういっそのこと夢でもいい。
夢ならば、心に秘めておけるだろう。
「嶺二っ」
「うん?どうしたの」
「嶺二っ、愛してる。愛してる、嶺二っ」
「うん」
やっと夢に見れた愛しい人を抱く光景を、それが夢ではなく現実だと知るのはすぐのことである。
     
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