希う
引き留めたのは、俺だった。
事務所には辞職願が発送され、当の本人は姿を消した。ユニット活動を続けようと言ったのはどうなったのかと、腹を立てたが心中真っ暗だった。
どこへ行ってしまったんだ。帰ってこい。
元々、俺達はソロでそこそこやれていた。けど、それじゃダメだった。ユニットを組んで分かった。俺達は、一人ではやっていけなかったんだと。
だから、アイツが続けたいと言ったのに同調した。もっと上を見たくて。
それなのに、アイツは突然姿を消した。
ソロの仕事が増え、次第に仕事を休むようになり、飲み歩くようになって。週刊誌にも取り沙汰された。
三人でどれだけ探しても見つからない。後輩を使っても、知り合いの伝を頼ってもどこにもいない。
俺達は、ユニット活動を続けることも出来なくなった。アイツがいないから。俺達は、アイツがいなければユニット活動を続ける意味もなかった。
そのうち連絡も取り合わなくなった。それでも、アイツを探し続けた。後輩にも頭を下げて、事務所にも辞職願の取り下げをお願いした。
アイツがいなかったら、俺達はどうやって上を見たらいいんだ。どんなにソロの仕事が入ったって、もう上を見ても真っ暗なんだよ。
そして、やっと見つけたアイツは裏路地でぶっ倒れてた。浴びるように酒を飲んで酔っ払っていて、それだけじゃなく異臭が凄まじかった。
こんなところで何やってんだ。
怒鳴りつけてやりたかった。
けど、出来なかった。
やっと見つけたアイツを抱き締め、久々に息をついた。それが、久しぶりの呼吸な気がした。
アイツを家に連れ帰った。ずっと帰っていないのか部屋は埃が積もっていた。まるでいなくなる準備をしていたみたいに。
頭の中で、ピースが外れていく。組み立てていったピースが、アイツがいなくなることを想像してボロボロになる。
きっと、アイツはまたいなくなる。目を離した隙に消えてしまう。
そんなのは許さない。消えないように捕まえてしまおう。
俺は、眠っているアイツの身体を拘束して、目隠しをつけた。部屋も暗くする。
風呂に入れてないが、構わなかった。余すところなく身体を舐め、綺麗にしてやった。
そして、俺はアイツを抱いた。やめて、と嫌がるアイツを押さえつけ中に出した。アイツがオメガで、俺の運命だと知っていたから。うなじを何度も噛んだ。
毎日身体を舐めて綺麗にしてやった。そして、中に出し続けた。
それから間もなくしてアイツの腹は膨らんだ。検査薬で妊娠していることも確認し、拘束を解く。
これで大丈夫。もうアイツは逃げられない。
アイツは優しいから人を殺せない。ましてや、自分の子供を殺すなんて出来ない。少なくとも、子供がいる間は大丈夫だ。産んで、またいなくなりそうだったらまた種付けすればいい。
アイツがいなくならないのならなんでもいい。子供も特に興味はなかったけど、アイツがいなくならないのなら欲しい。それにアイツと俺の子だ。可愛くないわけがない。
眠るアイツの額にそっとキスを落とす。手を握り、ここにいることを確認する。
「嶺二・・・」
頼むから、いなくなるな。
もう二度と俺の前から消えるな。俺はもうお前なしじゃ生きていけない。
「嶺二」
祈りにも似た願いが届くことはないと知っていながら、俺は今日もそうせずにはいられなかった。
絶望の淵にいたアイツを解放してやれず、犯し、繋ぎとめることしか出来ない。もし、俺が運命でなかったならば。他のやつなら、アイツをちゃんと繋ぎとめられたのだろう。
俺にはこれしかなかった。
それでも、アイツがここにいるなら。
もう何も望むことはない。
     
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