カミュレン+蘭嶺+αの場合
それは、他のメンバーも同じだった。
連れられて来た十歳の小さなメンバーは可愛らしい。
「ら、ランちゃん・・・こっちは聖川・・・な、オレのことお兄ちゃんって言って?」
「お、おにい、ちゃん?」
「あああこの頃は可愛かったんだよなぁあああこの頃は」
「神宮寺!」
やけにこの頃を強調して、神宮寺レンは小さな聖川真斗を抱き締めた。今は神宮寺レンを敵視しており、公認のライバル関係だが、小さな頃はお兄ちゃんと後をついて回ったものだ。その可愛さといったら!
「あ、真斗」
「あ、お兄ちゃん!」
カミュの後ろに隠れていた小さな神宮寺レンが、小さな聖川真斗を見つける。目敏いやつめと、神宮寺レンは舌打ちした。
が、まだ目の前には可愛い存在がいる。ぎゅうっと抱き締める。
「クマさん持ってるとか何これ可愛すぎるんだけどっ」
「ふ、ふえ・・・」
「おい、レン」
「はぁああバロンといいランちゃんといい、聖川といい。もうずっといてくれないかなぁ」
恋人と大好きな先輩とライバル。今では可愛いところなんてないくらいなのに、小さい頃はこれでもかというくらい可愛い。
「ウソデス、カミュがあんなに可愛いハズがありまセン」
「愛島、貴様・・・」
「よく覚えておきなサイ。あのヒトはオニデス、アクマデス」
「そうなの?」
「愛島ァアアッ!」
「わっ」
小さな愛島セシルは、ビックリして愛島セシルの陰に隠れる。この頃から変わらないのか、コッソリ舌まで出している。どうやら教育は順調なようだ。
「トキヤのちっちゃい頃って変わらないよねぇ」
「音也こそ」
「翔ちゃんは懐かしいですねぇ」
「お前もこんくらいから変わんねえよな」
「あれ?藍先輩は?」
「ん?アイアイは来てないみたいだよ?」
そもそも、彼は人間ですらないから来るわけがないのだが。そこは言わないでおく。事実を知るのは寿嶺二だけである。
一十木音也は納得したのか、ふぅんと相槌を打った。
「ホントランランとミューちゃんって、変わっちゃったんだねぇ。このまま成長してくれたらよかったのに」
「おい、嶺二・・・」
「寿、貴様・・・」
「え?あ、あははは!冗談だよーん」
最早、二人の変わりようは詐欺だろ。なんて言えない。
「ひじりんもちっちゃい頃は可愛かったんだねぇ」
「いえ、そんなことは。寿先輩も愛らしいです」
「えーホント?えへへー」
その小さな寿先輩は、今現在小さな一十木音也と一ノ瀬トキヤに話しかけている。小さな愛島セシルも加わり、三人で小さな一ノ瀬トキヤに絡んでるようにしか見えない。
小さな一ノ瀬トキヤは本を片手に迷惑そうだ。本当に変わらない。
「トッキーって小さな頃から残念だったんだね」
「そっくりそのまま熨斗つけてお返しします」
「えー?ぼくちんは年相応の可愛さだよ!」
「ですから熨斗つけて、と言ったでしょう。大人になってまでその騒がしさなんて呆れますね」
「ヒドいよぉ!ひじりん、トッキーがいじめるぅ!」
「一ノ瀬、あまり先輩を苛めるのはどうかと・・・」
「ぐっ」
よりにもよって、聖川真斗に泣き付くなんて。この野郎と、一ノ瀬トキヤは寿嶺二を睨む。ニヤニヤと聖川真斗に抱き着くなんて羨ましいったらありゃしない。その憎たらしい顔を張り倒したい。
「それにしても、突然なんなんでしょうね」
「何が?」
「この子達ですよ。おかしいでしょう?十歳の頃の自分が今ここにいるなんて」
「えー可愛いからいいじゃん」
このバカ!と言いたいのをすんでで堪える。
施設で育ったからか、子供の扱いが上手く、じっと黙ったままの小さな一ノ瀬トキヤを見たのは一十木音也だ。
だが、不安の靄はとれない。
何故、この子達が今来たのか。何も起こらなければいいが。
「ランちゃん、お兄さんと食事に行かないかい?お肉食べさせてあげるよ」
「いいんですか?」
「おい、レン」
「いいよいいよ。バロンも一緒に行こうね。あ、聖川も」
あの男は!
こっちの心配をよそに、小さな先輩とライバルにデレデレとだらしなく相形を崩していた。しかも、外になど出したら混乱するに決まっているというのに連れ出そうとするものだから止めるのに一苦労である。
「兎に角、あまり外には出さないこと。まぁ、ストレスの元にもなりますし適度に出すのはいいですが、人目は避けてください」
ヘタしたら、隠し子騒動ですまない。
「って那月!言ってるそばから何俺を連れて行こうとしてんだ!」
「あ、一緒にお料理しようと思って」
「頼むから俺を連れて行くな!」
「翔、サッカーしよう!」
「おれ、サッカーつよいよ!」
「おれもおれも!」
「おれだってつよいぜ!」
「ワタシもしたいデス!」
「い、い、か、ら、だ、ま、れ!」
般若の形相に、わいわいと喧しかった面々は「はい」と大人しく頷いたのである。
     
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