お父さんは心配です。
三つ子はすくすくと成長し、十歳を迎えた。
長女ルフレはカミュに似てしっかりもの。味覚は辛党だ。たまに、レンは二人がよく似ているからか、辛いものと甘いものを逆に渡してしまうことがあり、その度に大惨事となるのはご愛嬌。因みに甘いのは苦手。
長男エクラはレンに似ているのだが、母親譲りのイタリア男の血が騒ぐのかナンパしまくる。しかも、父親のように紳士的に誘うものだから、うっかり目を離すとハーレムを築いていたりすることが多々ある。因みに甘辛両方イケる。レンの顔で甘いものを嬉しそうに食べる姿は可愛いのに、その後辛いものも食べるので複雑な気持ちになる。
次女クレルは母親譲りの甘い顔立ちと、父親のような壮麗な顔立ちで、しかし中身は父親そのままだった。レンの顔で、カミュのようなセリフを言うのだから周りとしてはたまったものじゃない。ちなみに甘党でも辛党でもない。どちらも普通。
そして、父カミュを悩ませるのは長女ルフレ。
現役アイドルとして未だ芸能界で引っ張りだこの彼であるが、家庭を第一にしており、妻レンを愛しているといって憚らない。
そんな最愛の妻とは、オメガである妻の発情期に番だと分かってから恋人同士になった。シャッフルユニットで共演してからよう話すようになり、次第に惹かれ合うようになった矢先のことである。
妻との最愛の子供は可愛くて仕方ない。最初の出産で三つ子を産んで、二年後には第四子、五年後には第五子、そして今現在は双子を妊娠中である。
些か作りすぎな気がしないでもない。レンはオメガと雖も男のオメガだ。
しかし、カミュには可愛くて仕方がない最愛の妻。どれだけ歯止めをかけても、止められないのだから既に諦めの境地である。これでもよく我慢した方だ。カミュにしてみれば、毎年子供が出来てもおかしくないくらいの精力はある。
そして、そんな二人の血を受け継ぐ長女ルフレはしっかりものである。
母親を助け、父親のを助ける。まさしく長女である。
が、カミュを悩ませる頭痛の種もルフレだった。
「らーんちゃーん」
とてとて、と可愛らしい足取りで抱き着く愛娘。しかし、その相手は父親ではなく、にっくき男黒崎蘭丸である。
「お、おお。よお、ルフレ」
「・・・ルフレ」
「あ、お父様おかえりなさいっ」
「ああ、ただいま」
可愛い笑顔を向けられて、一瞬胸がときめいたのに、何故抱きついているのがにっくきメンバーなのだろうか。よりにもよって、このバカ。肉とロックしか頭にないこのタンポポに娘をとられたことが悔しくてならない。
「お父様、おかえりなさいっ」
「おかえりなさい、お父様」
長男エクラ、次女クレルは帰ってきた父親にまず抱きついてくれるのに。
やっぱり娘のおねだりだろうと、このにっくき男を呼ぶのではなかったと早くも後悔している。
心の中でぎったぎたの滅多打ちにしてやると、最愛の妻レンが出迎えてくれた。
「バロン、おかえり」
「ああ、ただいま」
「ランちゃんもいらっしゃい。今日はありがとう」
「いや、別に」
「ランちゃんっ、ルフレ、ランちゃんの絵を描いたのよ」
きてきて、とルフレは蘭丸を引っ張っていく。
一方、妻のフォロー虚しくカミュはギリギリと歯噛みしていた。見た目はカミュに似ているが、しっかりもので、でもレンにも似ていて。二人の血を分けた可愛い愛娘な上にしっかりもので手がかからない子だったから寂しくもあったが、大丈夫と思っていたのは間違いだった。
よもやこんな身近に害虫がいたとは!
「見て!」
「ああ、カッケーな」
「でしょう!ルフレ、ランちゃんのお嫁様になるために、ママと花嫁修行してるのよ」
「花嫁修行っ?」
「・・・レン」
聞いてない、そんなこと。じとりと睨み据えると、苦笑している。きっとルフレにせがまれて断りきれなかったのだろう。
いずれ淑女とした相応しい教育を身に付けさせるつもりではいたが。成る程。ちゃんとした教育が必要なようだ。
「ねぇ、ランちゃん。ルフレ、ランちゃんに見合う立派なレディになるわ。だから、待っていてね」
「え、あ・・・」
「ねっ、約束よ!」
「えー・・・うげっ」
カミュが般若のように二人を見ていた。
物心ついた時から、ルフレは蘭丸一筋で、何かと結婚を迫られているのである。こうしてカミュに睨まれるのはもう日課のようなものなのだが、日に日にその威力が凄まじいものになっているような気がしてならない。
「ランちゃん」
「あー泣くな泣くな。わーったから。大人になったらちゃんと考えるから」
「約束よ!」
「あ、ああ」
貴様なんぞに可愛い娘を渡してたまるかこのタンポポめ!という罵倒が聞こえたような気がする。
ちゃっかりと将来の約束なぞしおってからに。貴様なんぞにやるくらいなら、聖川に嫁がせたほうが一万倍マシだ!
と、勝手に巻き込まれた真斗としては首を振りたい現状である。
「あっちゃー」
「お母様」
「あ、な、なに?エクラ」
普段はおとなしいエクラが、レンの袖をひく。下からの自分と同じ顔が大きな目で見上げる光景に未だ慣れない。
「エクラ、まさとさんをお嫁さんにしたいです」
「え」
「エクラにも花嫁修行教えて」
「クレルも!」
「クレルも聖川をっ?」
「ううん。やりたいだけ」
「そ、そうなんだ・・・」
今更カミュの気持ちが分かり、レンは苦笑いを零した。
「アイツと親戚はやだなー」
ってことは、オレ、お義母さんって呼ばれるのかな?きもちわるっ。
     
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