イケメンパパは将来が不安です
上から、女の子、男の子、女の子。全員元気に揃って帰ってきた。
二人で帰ってこれなかったのではなく、二人じゃなくて四人で帰って来ちゃった、という意味だったと聞かされたのは個室に移ってから。
「知らなかったんですか?」
「ああ。レンも知らなかったらしい」
担当医も、なんかおっきいなーと思っていたらしい。生きていたから許すが、もしもがあったら抹殺していたところだ。
「カワイイ!カミュに似なくてヨカッタ!」
「愛島、貴様……」
「ふふ、似てるよねぇ?」
お包みの中の三つ子に語りかける姿は、母親だった。
元々、子供を産む身体でもなかったのに、無事に帰ってきただけでなく三つ子まで産むとは。流石自分が選んだだけある。
出産が長引いたのは、三つ子だからだったらしい。本人はピンピンしているのだが、なかなか出てこなかったらしく、やっと出てきたと思ったらまだいることが発覚。検査をしたら、あと二人おり、慌てた次第らしい。
「ほら、この子なんてバロンそっくり。目の色も髪も、肌も、顔も。女の子なのに、スゴいキレイなレディになるよ」
「こっちはお前に似ている。性格はお前にあまり似て欲しくないな」
男の子は、レンにそっくりだった。嬉しいが、あまり女性を引っ掛けるような悪い男になってほしくないと思ってしまうのは親心というやつだろうか。
「この子は、髪はカミュ先輩ですが、目はレンに近いですね」
「そう?」
「ああ、肌もカミュ先輩だな」
「顔はレンか?」
「……それは……」
最後の女の子は、カミュとレンをそっくりそのまま足して二で割って受け継いだようだ。
もしや、女の子なのに男を骨抜きにする小悪魔になってしまわないだろうかと、不安が渦巻く。いや、嫁にやらん。彼氏も作らせん。
カミュは固く心に誓った。
「レンレンスゴイねぇ。一度に三人もって。そんなにミューちゃんハッスルしたの?」
「そうかもね」
クスクスと笑って、レンはチラとカミュを一瞥した。
「寿ぃ!貴様、氷漬けにしてやろうか!」
「わぁ、おとやん、ミューちゃんが怖いよぉー!」
「わっ、俺に隠れないでよー」
「嶺二、音也を巻き込むのはやめてあげたら?」
子供達は騒がしさに、キャッキャッと笑っていた。レンに似て全員図太いのかもしれない。
「わぁ、可愛いですー」
「赤ちゃんってホント可愛いよなー」
「一緒にお料理したいですねぇ」
「イイね。情熱のイタリアン料理でも作ろうか?」
「僕はお菓子を作りたいですー。隠し味を一緒に考えたいですー」
「那月!それはやめろ!」
「……」
味覚がレンに似たらどうしよう。カミュは、真剣に考えた。
レンが作る料理は、バカみたいに辛い。たまに作る手料理は死ぬかと思うほど辛く、甘党なカミュは地獄を見た。辛くない料理は辛くする。あの味覚になったら。
いや、それならまだいい。もし、その味覚で料理を作ってくれたとしたら。食べてくれないの?と可愛らしい目を潤ませて見てきたら。
どうしよう。
まだまだ先のことなのに、カミュは真剣に悩んだ。
因みに、自分が極度の甘党とは気付いていない。
「アクマにならずに、レンに似てキュートになりマスように」
「いえ、レンに似たらだらしなくなります。ここはしっかりしたカミュ先輩に似た方がいいでしょう」
「ノン!かわいくない!」
「いやいやいや、ミューちゃんちっちゃい頃は可愛いよぉ。ほら」
「ウソです!アリエナイ!」
「愛島ァアアアアア!寿、貴様何故それを持っている!」
「カミュ、コワイ!」
「これ?シャイニーさんがくれたよ?可愛いよね、このミューちゃん」
「これは……可愛らしい」
「チィッ、寄越せ!」
よもや過去の記憶の産物がまだ出回っていようとは。十歳の時の企画に写真を載せられ、あの時は羞恥で死ぬかと思った。
「ナルホド。今ならアクマではなくテンシにナレマス!」
「ほう。いいだろう。愛島、今日という今日は、貴様のその性根を真っ当に叩き直してやろう」
「ふふ、名前はどうしようかなぁ?三人も産まれるって思ってなかったから全然考えてなかったよ」
北風と太陽の決闘を横に、レンは子供達と遊んでやった。カミュ似の女の子は大人しく、レン似の子はキャッキャッと笑う。二人に似ている子は、ぼうっとしている。
「パパにお願いしないとねぇ、一緒に考えてって」
三人とも、自分が産んだとは未だに信じられない。
だが、三人ともレンが産んだ。あの痛みも苦しみも、こなくそと踏ん張って、耐えた時も。全部レンのものだ。
「さて、パパにどうやっておねだりしようかな」
というか、早くかまってほしいなぁ、と思いながら、レンは騒ぎの渦中にいる夫を見つめた。
「ま、面白いからいっか」
暫く、一人で考えてみよう。
「パパはもう考えてたりして。なーんてね」
そのまさかがその通りだったと知るのは、もうすぐ。
「あー聖川、リンゴむいて」
「む、仕方ないな」
「あ、私は蜜柑を剥きますね」
夫が騒いでいる横で、レンは優雅にリンゴと蜜柑をむいてもらい、口まで運んでもらった。
「不倫か!」
羨ましがった夫に、叱られるのは間も無くのこと。
     
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