旦那様のイケメンがとどまるところを知りません
「ばーろんっ」
愛しい声と共に、背中に体温を感じた。決して細くはない腕が回る。
イタズラな声音は、楽しそうに背中に頬ずりしている。何が楽しいのか、けれどこちらまで同じ気持ちになってくる。
腕をとり、そう大差ない背丈の犯人を見遣る。
「なんだ?」
「んふふー」
だが、ニヤニヤと笑うだけで教えてくれない。
ぐりぐりと頭を押し付け、抱き着く腕に力をこめる体温が、愛しくてならない。
「レン」
結婚してから呼ぶようになった名前。
苗字で呼び捨てていた頃とは、甘やかさも違う。名前を呼ぶたびに、嬉しそうにパタパタと見えない尻尾を振るものだからついつい甘やかに呼んでしまう。
「なぁに、バロン」
呼びつけておいて、しらばっくれるのも可愛かった。何をしても可愛く見える。多分、目に入れても痛くないだろう。いっそのこと、ずっと見られるように入れていたい。
「おはよう、レン」
「んふふー。おはよ、バロン」
相変わらず、嬉しそうだ。
火を止めて、くるりと振り返る。料理はおしまい。
にまにまと、だらしなく表情を崩す顔に口付ける。頬、額、鼻。
抱き締めて、唇に。
「レン」
「バロン!」
ぎゅうと、全身で好きと言って抱き着く彼が愛おしい。
抱き締める腕に力を込めた。だが、あまり強くはしない。
その腹に、二人の子供がいるから。
「バロン、大好き!」
「俺も、愛している。レン」
抱き合って、愛を伝えるだけ。
それだけなのに、嬉しくもあり満たされて、仄かに胸が熱くなる。
熱に背中を押され、腕の中の可愛い子を抱き上げた。
「ひゃっ」
腹の子に障らぬよう、横抱きにしたが、我ながらいい案だった。首に回された腕に、気分が良くなる。
本当に可愛いことをしてくれる。
「あと一時間、か」
あまり時間はないが、可愛い妻の可愛らしいお誘いだ。据え膳食わねば男としてよりも夫として廃る。
キッチンからリビングを突っ切り、二人の寝室へ向かう。
レンが妊娠した時に、二階があったマンションから引っ越し、一階だけの広いマンションに引っ越した。よって、寝室もすぐ近くだ。
腹の子が産まれたら、新築を建てるつもりでいる。しかし、やはり二階建てではなく長屋がいいだろうか。それとも、何れ子供達のプライベートも考えて二階だろうか。
ドアを開けてもらい、ベッドになだれ込む。優しく丁寧に下ろし、キスをする。舌を絡めつつ、何度も。足りないというように。
だが、今は時間がない。味わい尽くしたい気持ちは山々だが、愛したいのもある。
今は、時間いっぱい愛したい。
「レン」
「ん、バロン。早く愛して?」
まったく出来た嫁で、逆に心配になる。
上目遣いで晒されたワンピースの中。じわりと濡れ、ペニスはランジェリーから出たいと暴れている。
本当に、可愛い嫁だ。
「ああ、俺も早く愛したい」
「きて。早く」
ランジェリーを下ろし、脱がす。愛液を垂らして待っている秘部が、晒された瞬間ひくひくと疼いていた。
「ふっ、もうこんなに濡らして」
「んっ、バロンに早く来て欲しかったんだっ、」
指を埋めれば、もう何度も受け入れているそこは待っていたと言わんばかりに食いつく。コンコンとノックすると、恥ずかしがって啼く。
指二本入っているのに、物足りなさげにおねだりをしてきた。
「こら」
「バロンのいじわる、もっ、ん」
窘めるのに、レンはむうっと膨れ面になった。
まったく、と呆れ口調で、けれど声音には愛しさが隠しきれなかった。
指を三本に増やすと、中は悦んだ。
「ん、あっ、あ」
「レン」
「ん、んふ、ぁ、は」
キスを落とすと、拙いキスで一生懸命に応えてくれる。快感に身悶えながら、欲して。
なんて可愛いんだろうか。
「入れるぞ」
どくどくと、脈打つ陰茎をあてがう。早く入れろと、今にも暴れだしそうに張り詰め、正直答えを待つのも惜しかった。
レンは、うんうんと頷いた。
「きて、早く……早く、あ、あぁああアッ」
「ぐっ」
ここ最近入れることはあまりなかったからか、久々の挿入はキツかった。ぎゅうぎゅう締め付けてくるわ、覚えていた中よりも締まる感覚に肉棒が猛るわ。
あまり無茶をしないように、一息ついて自制する。
レンも、ひくひくと物欲しげにしながら自制していた。
朝だから、というのもあったが、腹の子に障るといけない。
オメガと雖も、レンの身体は本来妊娠出産するための身体ではないのだ。
レンと腹の子。どちらも無事に帰ってきてほしい。
だから、無茶はしないと二人で決めた。
それでも偶にどうしても欲しくなるときはあって、そのときは時間の限り抱き合うことにしている。それだけで満たされるようになったのはいつからだろう。性欲旺盛だった頃にレンが妊娠してから、欲求不満になる身体がセーブに追い付かず泣かせたこともある。
「バロン、バロン」
「レン」
「ふふ、バロンだ」
「、っ……ぐ」
「あ、あァあああっ!」
「チッ」
思わず舌打した。
あんまりにも、可愛く笑うから。花がほころんだように、可愛いことを言うから。
理由は沢山あった。先に達してしまった後ろめたさもある。
「え、……ふふ、バロンイっちゃったの?」
「次はおまえだ」
「あ、はァッ、あァん、ん、ンァあっ!イイッ、そこ、そこっ、もっとっ」
的確に弱いところだけを攻める。
レンは貫かれる快感に身を捩って啼いた。
「あ、イイッ、い、あ、あっ、あ」
「レン」
あと少し。
耳元でそっと囁く。
「愛している、レン」
とびきり甘い声音で愛を囁く。
「あ、あぁあああンッ、あ、アッ」
それだけで、ぎゅうぎゅうと締め付けて達してしまった。
ペニスからは、濃い白濁が二人の腹を汚していく。
もう一度レンの中に注ぎ、中から出る。
名残惜しいが、あまり無茶はさせたくない。
だが、離れがたく、ベッドの上で息を重ねる。荒い吐息は、互いのものだと思うと胸が熱くなった。
惜しむように、唇を重ねた。少しの距離も遠い。
しかし、刻一刻と時間は迫っていた。
二人を引き裂く時間に恨めしく、しかしながら、少しの間だと無理矢理に納得させてシャワーを浴びた。レンの中も丁寧に掻き出してやり、ベッドに寝かせる。
身支度を整え、ベッドに腰掛ける。
レンはうっすらと目を開け、ふわりと微笑んだ。
「行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
唇に、それから両頬にキスを落とし、寝室を後にした。
カミュが出たのを確認して、レンは丸くなった。顔はリンゴのように真っ赤だった。
カッコいい。カッコよすぎて死にそう。大好きだ。
カミュに好きと惜しみなく伝えているし、好きと言われて喜んでいるけど、本当は羞恥で死にそうだ。好きだからこそ、こんな真っ赤になっているところなんて見られたら爆発してしまいそう。
「レン」
しかし、去ったはずの声が響いた。
恐る恐ると振り返ると、笑みを浮かべた夫がレンを見ていた。
「今夜、覚悟しておけ。おまえを抱き潰す」
静かな宣言を残し、カミュは今度こそ行ってしまった。
「ああ、寝れないだろうからしっかり寝ておけよ」
という言葉を残して。
「ううううううわぁああああああカッコいぃいいいいいいいいい」
残されたレンは、我に返ると、じたばたと身悶えた。
でも恥ずかしい!
と、カッコいい旦那様の夜の宣言に爆発しそうになりながら。
     
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