教えて!レンレン!
始まりは、音也の一言だった。
「ねぇ、レンってトキヤと付き合ってるんだよね?」
この日は、スターリッシュでの収録があり、歌番組での出番も終えて待機中だった。スペシャル番組ということで、大勢のアーティストが参加するため、出番が来るまでは楽屋待機だった。
そのため、七人はまだまだ順番が回らない暇を思い思いで過ごしていた。
その時、楽屋には珍しく全員揃っていた。
レンは先輩アイドルの黒崎蘭丸とカミュのいるカルテットナイトの楽屋に行かず、翔も日向龍也の楽屋に挨拶に行く前だった。那月は真斗とカルテットナイトの楽屋に遊びに行こうかと話しており、音也はソロのためにギターの調整、トキヤは読書に勤しんでいた。セシルは……なんか回っている。
「ブーッ!」
「な、ぅおおおおお音也ァッ!」
「い、一十木!」
音也の疑問に、一部メンバーは騒然とする。
トキヤとレンが付き合っていることは、スターリッシュとカルテットナイトでは暗黙の了解だった。が、そのことについて深く問い質すのも、暗黙の了解でしないことになっていた。知らぬが仏というやつである。
しかし、この天然核爆弾、天衣無縫と聞こえはいいが要はただのバカなだけの男は、そこをズバッと突いてしまったのである。
トキヤは、メンバーにレンと付き合っていることで迷惑をかけている負い目もあり、考えなしな質問をする音也を心の中で滅多刺しにした。
「うん。そうだよ」
しかし、上には更に上がいた。
トキヤの愛する恋人レンは、音也の疑問にあっさりと頷いてしまった。
「レンんんんんんんんッ」
真斗は白目を剥いて倒れた。翔が寸前で抱き留めてくれてよかった。
他のトンチンカンなメンバーはキョトンとしている。
「二人ってさ、普段何してるの?」
「普段?」
しかし、トキヤを置いて二人の話はどんどん進んだ。
「トキヤって、レンと違って……その……あんなこととかしてるイメージないじゃん?」
言いにくそうに、言葉を濁したセリフにレンは首を傾げた。稍あって、ああ、と笑う。
誰がどう見ても一ノ瀬トキヤは色事から縁遠い。透けるような白い肌、細い四肢、ストイックな姿勢。
「そんなことないよ」
けれど、レンは知っている。
二人の時のトキヤは甘えただ。
普段、レンがトキヤに甘える。トキヤが甘えてくることはない。
だけど、抱き着いたら嬉しそうに抱き締めてくれる。キスをしたら、もっとくれる。
トキヤが何かに集中している時、かまってと邪魔するのに、嬉しそうにする。
「えー!見えないよ!」
「ふふ。すごいよ」
たっぷり色を含んで、レンは艶やかな笑みを浮かべた。すごい、のところだけ強調して。
「レン!」
慌てるトキヤを一瞥して、レンは笑みを深めた。
「昨日なんて、オレ、失神しちゃった」
「えーっ、ホントッ?」
「ホント」
昨日とは逆でトキヤが白目を剥いた。真斗は聞きたくないと耳を塞ぎ、翔は顔を真っ赤にしてわなわなと震えている。トンチンカンは興味津々といったていで聞き込んでいる。
音也は、身を乗り出した。
「レン、教えて!」
「ふふ、あのねー…………あ」
その時、レンの視界に見慣れた姿が入った。
楽屋の入口で、今正に入ってきましたと言わんばかりの四人にしまったと、内心舌を出した。
「あっ、レイちゃん!聞いてー!」
「う、うん。おとやん、聞いてたよ」
言わずもがな、カルテットナイトの四人だ。
「それにしても、あのトッキーが、ねえ?」
チラッと視線を送られ、青ざめていたときやは死にたくなった。
が、まだマシな方だ。
「トキヤァアアアアアッ!」
「一ノ瀬、そこへなおれぇえええええ!」
この、レン大好きな猫可愛がりする先輩二人に比べたら。
トキヤは、また白目を剥いた。
死んだ。短い人生だった。出来れば、聖川さんと二人でユニットを組んでみたかった。と、まるで遺言のような言葉が浮かぶ。
「へぇ、トキヤって淡白に見えて意外と……」
美風藍は冷静に分析し始める。
「あーらら」
元凶のひとつであるレンは、傍目に見ながらニヤニヤと笑った。
そして、そっぽを向く。
本当は音也につっこまれた時も、カルテットナイトに聞かれた時も羞恥で死ぬかと思った。なんとか普通を装っていたけれど、ここに来て限界を迎えていた。
が、やはりそんなに甘くはなかった。
「あれ。レン、顔赤いよ?」
「っ、」
「……トキヤ、テメエ立てコラ!」
「一ノ瀬、貴様と一度ゆっくり話し合わなければならないようだな。ゆっくりと」
「い、一ノ瀬が神宮寺と……」
「真斗ぉおおおおおしっかりしろぉおおおおおお!」
「わぁ、レンくんかわいいですぅー」
「那月、これが修羅場デスカ?」
「ふぅん。レンってそうやって照れるんだ」
「レンレン、で、どうなの?おにいさんにもっと詳しく教えなさーい!」
「レン、大丈夫?」
取り敢えず、
「スイマセンソウタイシマス」
帰る。
「アーッ、ゴメンってレンレン!ねっ、機嫌なおして!」
「そうだよ、出番まだだよ!」
「わお、おとやんきっちくーぅ!じゃなくて、それ逆効果ー!」
「うるさいかーえぇるうぅううう!」
後日、事務所にスターリッシュとカルテットナイトが五月蝿かったと苦情が来たとか。
「トキヤ、テメエ覚悟出来てんだろうな?」
「一ノ瀬、貴様よくも神宮寺を……」
「真斗、しっかりしろ!真斗ぉおおおお死ぬなぁああああ!」
「一ノ瀬が、神宮寺と……」
「日本の修羅場はオモシロイデス!」
「レンくんかわいいですねぇ。トキヤくんもかわいいです」
「あ、喉渇いた」
     
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