普段大人しい人ほど怒らせちゃダメって言うけど普段怒らない人も怒らせちゃダメ
本当は、知っている。
「イッチー」
膝の上にごろんと頭を乗せると、ちょっと顔を顰める。
「レン、寝るならベッドで寝なさい」
「んー寝ないから」
腰に抱き着くと、こらって窘められる。
ぐりぐりと頭を擦り付けて、嫌と意思表示。
「まったく。アイドルなんですから自覚しなさい。こんなところで寝たらラインが崩れますよ」
ぺしぺし、と頭を叩かれるが気にしない。
いやいやと尚も抱き着く。
「まったく……」
仕方ないですね、と溜息。
でも、レンは知っている。溜息をつきながらも、見えないはずの顔が簡単に想像がつく。きっと見えないところで微笑んでいる。
「レン、起きなさい。レン」
やだ。今度は、ぎゅうってしがみついた。嗅ぎ慣れたにおいが鼻いっぱいに入ってきた。大好きな匂い。
「レン、ベッドに行きますよ」
テレビを消して、雑誌も置いて。優しく揺すぶられる。
レンを無視して、構われていたものが放られた。
「イッチー」
首に腕を回す。
飛びつくと、小さく声をあげながらも受け止めてくれた。
「まったく。この甘えんぼうさんが」
「ふふ、作戦成功」
優しく髪を撫でる掌が心地いい。
レンは、首筋に顔を埋めた。すんすんと嗅ぐと、体臭がふんわりと香る。多分、汗も混じったにおいにその表現はおかしいのだろうけど、レンが大好きなにおいにはぴったりな気がした。
「ほら、起きなさい。私は運べないんですからね」
「っ、ふふ。そうだったね」
「笑い事じゃありません」
そう言うのに、声は全然怒ってないからつい笑ってしまう。
レンより小さくて、体重も軽い。百八十近くあるが、レンは超えている。体重も微妙な差。オマケに筋力もそう変わらないものだから、一度横抱きでベッドに運ぼうとしたトキヤはすごかった。今思い出してもおかしい。
クスクスと笑い出したレンをトキヤは黙殺する。何を考えてるのかバレバレなのだろう。そこが可愛いのだが。
手を繋いで、寝室に行くとすぐにベッドに押し倒される。キスの雨がレンを打つ。しっとりと優しいキスはトキヤそのものみたいで好き。
「んふっ」
「……なんです気持ち悪い」
「あ、ヒドい」
本気でドン引きしている。
キスの最中にムードもへったくれもない。正直なところはいいが時と場所を考えて欲しいものだ。
「いきなり変な笑い方するからでしょう」
と言えば、真顔で怒られた。
でも、それは仕方なのないことだと思う。
さっきまで、仕方ないとかなんとか渋々といったかんじで、妙に大人ぶっていたというのに、寝室に入るとケダモノみたいに押し倒してキスして。キスまで優しいのにどこか爛々としていた。
「まあ、そんなあなたに付き合えるのは私くらいですね」
「そうだね」
「……バカにしてます?」
「してないよ」
顔に出ていたらしい。レンは引き締めて、否定する。が、やっぱり不満げだ。そんなに顔に出ているだろうか。
年下の恋人は、たった一つの年齢差も気にしているらしく大人ぶりたがる。レンに追い付こうと背伸びする恋人が可愛くてさせたいようにさせているが、こんな時に年下ぽい可愛らしさが見れる。実はそれが好きなのだとはもう少し秘密にしておく。
「まあ、いいでしょう。・・・どうせそんな余裕もなくなるんですからね」
すっかり拗ねてしまった恋人は、レンをじとりと睨んで唇を離してしまった。
名残惜しくて追い掛けると、そっと指で唇を制される。
「ふふ。オレの余裕がなくなるくらい、何をしてくれるのかな?」
艶やかに、笑む。それに弱いと知っていて、わざと。
しかし、どうやら今日は恋人が一枚上手だった。にっこりと笑顔が返ってくる。
「言ったでしょう。余裕をなくす、と」
ぞくっと、悪寒が走る。





「も、いっち……ぁ、あ……」
もう絶対にからかわない!と猛省するほど、トキヤのお仕置きはキツかった。
尿道プレイとか拘束とかドSプレイをされてはいない。フィストとかも。
寧ろ、何もしてくれない。指も何も入れてくれず、後ろの孔の周りを丹念に撫でてはしっとりと触れ、疼くそこを徹底的に避けて。
お陰でレンは身体が火照っているのにイけない、という地獄を味わっていた。これならハードプレイの方がマシだ。今なら食糞でもなんでもしてやる。……いや、食糞は遠慮したい、かな?
「どうやらあなたには何を言ってもやっても意味が無いようですので。なら、しなければいいと思いまして」
「ね、ねちっこい……」
「ほう?」
「あ、ごめんなさいウソですすいませんでした」
「まあ、いいでしょう」
え、と期待に目を輝かせた。
しかし、トキヤはあの悪寒の走る笑顔だった。
あ、ヤバイ。レンの本能が告げた。が、腰はもうガクガクで、後孔はトキヤを欲しがって垂涎している。動けない。
「どうやら私はねちっこいようですので……」
トキヤは、唯一触れていた指すらも離し、ベッドから下りてしまった。傍に立つと、レンを見下ろす。
「どうしました、レン」
「ハッ……ねちっこいとオジサンみたいだよ……」
せめてもの強がりだった。しかし、それはトキヤの怒りを煽るだけだった。
トキヤは青筋を浮かべながら、しかし努めて冷静に答える。
「すみませんね、ねちっこくて。ですので、ご自分でどうぞ?ねちっこくない、ご自分の手でね」
レンは、思った。
この変態オヤジ!
どこがねちっこくないだ。それがねちっこいというのだ。息も荒く、欲しがっているレンを放置して愉しもうだなんて。
レンにも年上の矜持というものがある。やられてばかりいてはなるものか。
「ふふ、そこでよーく、ねちっこくない若者を観察しててね?」
ぺろり、と唇を舐める。艶やかな雰囲気が、レンを包んだ。
ごくり、と冷たい目が唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
指を一本、口に含んだ。根元から舌を絡め、見せ付けるように舐める。その間に、欲しがって疼く孔を、限界まで大きく足を開いて見せ付けた。愛液に濡れ、ひくひくとしているであろうそこが求めているのは指なんかじゃない。
けれど、濡らした指で、引っ掻くように入れる。すると、孔はよりひくひくと蠢き、足りないと暴れ出す。
ちら、と視線を送ると、そこを凝視する視線とかち合う。
だが、指を抜いて、別な指を含む。一本だけ含んでいたが、もう一本も乾いてきたので含む。いい具合に濡れてきたところで、もう一本。そうして、五本全て濡らす。口の中に収まり切らないそれを、はむ、と含む。
その合間に、下肢ははしたなくどろどろとまちきれなくなって、小さくはないペニスはまだかまだかと催促する。
頬をへこませて、じゅぶぶぶ、と舐めては、口の中で舐めてみたり。
トキヤの下肢はすっかり膨らみ、テントを張っていた。
にたり、と笑う。トキヤもそれに気付き、眉を顰める。
しかし、言った手前動くことはしない。
それすらもレンは分かっていた。
「ん、足りないな……」
五本全ての指を孔へと導き、くぱぁっと開く。中が見えるほど開かれ、どくん、どくんと快感の脈を築く。
指で掻き回すと、イイトコロには当たらない。変な感じがするばかりだが、慣らされた身体は快感と勘違いしてくれる。
「ん、足りない……」
バラバラに探る。さっきとは違った感じで、悪くはないがやはり気持ち良さに比べたら全然違う。レンもそれを分かっている。
トキヤを見ると、視線は釘付けだが動く気配はない。
内心、舌を打った。意外と手強い。
ペニスに触ったら簡単にイってしまうので、胸の小さな粒にちょこっとだけ触れる。とんがりもないそこは、けれど触れただけで硬さを覚える。主に似て賢い。
「っは……ねぇ、イッチー」
いつもイッチーはどんな風に触ってた?オレ、一人遊びなんてペニス触るくらいだから分かんないよ。
それに、イッチーがオレをいつも触ってくれるから、最近全然触ってないよ。
「イッチー……欲しい」
トキヤは、動かない。いや、動けないと言った方が正しい。淫らに誘うレンから視線を逸らせなかった。
いつまで経ってもおねだりを聞いてくれないトキヤに、レンはむうっと頬を膨らませる。
レンがこうすれば老若男女問わずあっさり堕ちて襲いかかるのに、トキヤには聞いた試しがない。
「も、イッチーのバカ……ッ」
とうとう焦れて、トキヤの張り詰めたペニスに手を伸ばした。
「ちょ、レン……っ、」
全然収まりきらないペニスは、お綺麗な顔をしたトキヤに似合わず凶悪に膨らんでいた。どくどくと反り返り、思わずまじまじと眺めてしまう。
自分の一人遊びでこうなったのか。動かないから、きっと勃っていないと思っていた。
「ん、む……」
「レン……ッ」
太さは普通より少し太いくらい。それよりも長さだ。口に含みきれないくらい長いペニスは、何度口で愛撫しても慣れない。含みきれずえずくこともままある。
「ふ、ん……む、むう……」
「っく……」
フェラなら自信がある。自分に同じものがついているから。要するに、自分のイイトコロがトキヤのイイトコロなのだ。
先端をぐりぐりと舌でつつきながら、頬で締めたり緩めたりと全体を愛撫する。裏筋をそっと舐めるとぶるぶると震える。
「ん、かわい……」
「レン……ッ」
うっとりとペニスに頬ずりする。先走りが滴り、レンの頬をどろりと白く汚した。
トキヤはレンの顔が自分のもので汚れているのを見てしまい、またペニスが勢いをつけた。
「ふふ、元気だね」
まるで、愛おしいと言わんばかりだ。
レンは、何処で覚えてきたのか、そうっとトキヤのペニスを撫でる。
ふと、レンの腰が揺れていることに気付く。床にペニスを押し付け、自慰をしているようだ。孔も押し付けようとしているのか、届かずに息を詰めて。
トキヤは、むっとした。目の前に自分がいるのに、床で自慰なんてたまったもんじゃない。
レンの口に、ペニスをぶち込んだ。
「んむっ?」
艶めいた笑みが一変して、驚愕に染まる。
余裕綽々の顔が崩れたことが嗜虐心を煽った。
レンの双眸が、不安げにトキヤを見たのを皮切りに、腰を前後した。
早急なピストンに、レンは喉奥まで突かれ、涙目だった。ともすれば、えずいてしまいそうだった。
「んぶ、う、うっ、ふ、うっ」
普段、優しく触れるトキヤのケダモノじみた動きに、鼓動が早鐘を打つ。こんなことでときめいてるなんて知れたら、トキヤにからかわれそうだ。
「ん、ぶ、う、うっ……んんぅうううー!」
トキヤは、レンの口の中で達した。全て出し切り、ペニスを抜く。
「ん、は、ぁ……っ」
レンはすぐさま咳き込みえずいた。
「う、ぇ……う、は……ぁ」
白濁が、レンの口を汚している。
加えて、えずきと咳き込みで苦しみ、涙を零す様は普段の飄々とした彼からはかけ離れていた。これがギャップ萌えというやつかもしれない。
トキヤはまだ硬度を保ったままのペニスを、手で扱く。
すぐに、また残りを吐き出し、それをレンの顔の目の前で出した。
男らしい、けれど綺麗な顔がトキヤの精液で汚される。
虚ろな目は、吐き出されたことにも気付いていないだろう。
「あ、……?」
「……っ、」
ヤバい。トキヤは、心の中で舌打った。
レンをベッドに押し倒し、細い足の間にまたむくむくと起き上がってきたペニスを挟んだ。
「あ、あ……ッ」
挿入しなかったのは、まずこの欲を発散させないと壊してしまいそうだったから。
暴走しかねない欲を必死で押さえ込む。
「あ、な、なに……あたっ、あたって、あ、ァ、ああッ」
しなやかに揺れる、細い身体。筋肉もついているのに、くびれまで出来ている肢体は女装しても気付かれないほどの危うさがある。
「レン……ッ」
「いっ、ち……あ、アッ、あ」
「くっ……」
まただ。涙に濡れながら、必死にトキヤを呼ぶレンの姿に、トキヤは早々に達してしまった。
早すぎる絶頂に、まだイけていないレンは唖然としている。
そのよく分かっていない顔が憎たらしい。
しかも、レンは顔や口にトキヤの精液をかけられており、トキヤの征服欲を満たすのだ。かけたのは失敗だったかもしれない。
「は、イッチー、イっちゃったの?」
早いね、とからかう声。
息を乱して、上下する腹、汚れた顔。イけていない、小さくはないペニス。
全てがトキヤを煽るには十分すぎた。
壊してしまいそうだと抑制した本能を、トキヤは開放した。
もういい。壊す。
「い、ァあああっ、あ、いっち、ひ、ぃいっ、ん、んァああッ」
愛液をだらだらと零す孔に、
トキヤは一気に挿入した。先程自分で解させたからか、思ったよりも入りやすかった。
休みを与える間も無く、ストロークを開始する。最初から早く、奥を穿つように。
「いっち、い、ち……っ、」
切ない喘ぎが、耳を掠める。
イけてなかったレンのペニスは早々に限界を訴え、扱いてやると、手の中でぴゅるぴゅると先走りを零し始めた。
「あ、あ……あ、あァあああッ!」
「っ、う……」
ぎゅうっと締め付ける中に、トキヤは飛沫を叩きつけた。
「っ、はぁ…………あ」
息を整え、レンに一瞥して固まる。
涙やら汗やら、トキヤかレンどちらの精液か区別もつかない、口の中まで混ざり合って、ありとあらゆる体液で顔を汚している。やけにおとなしいと思ったら、白目を剥いて失神していた。
「これは……」
からかうだけじゃすまない。
トキヤは、白い面差しをさっと青ざめさせた。
失神した恋人を甲斐甲斐しく風呂に入れ、丁寧に洗い、介護に努めるのだった。
そして、甲斐甲斐しい介護も虚しく、意識を取り戻したレンに、下僕同然にパシらされるのである。
     
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