キライな朝と、ダイスキなヒトと、ヨルの約束
それは、散々お仕置きされまくって、オレが何度めかの気を失った時。
スマホの着信音が鳴り響いた。
バロンは、オレが気を失っていると言うのに、まだお仕置きする気満々で動こうとしていたところだった。
けれど、着信音に一瞬意識を持っていかれる。それも一瞬でしかなく、すぐに腰を引いた。
が、
『レンッ、あなた今日が仕事って分かってるんですか?とっとと起きなさい!なんなら今から起こしに行ってあげますよ。いいですね?後五分経っても連絡がなかったら押しかけますからねっ?とっとと顔と首洗って待ってなさい!』
オレのスマホから、イッチーの怒りの声が聞こえてくる。相当お怒りのようで、こちらまで般若が見えてくるようだ。
だけど、バロンはまだ止めようとはしなかった。後輩の言うことなんて知ったことか、と。
が、
『おい、カミュ!テメエさっさとレンを寄越せ!さっきからトキヤが苛立ってこっちもかなわねぇんだよ!嶺二と音也もどうしようってうるせぇし。トキヤと一緒に押しかけるからな?さっさとしろよ!』
バロンのスマホにかかってきた、ランちゃんからの催促にとうとう止めざるを得なくなる。
バロンは、大仰な溜息をついた。
「……っぷ、……っ、あっははははっ!」
「レン」
「ふ、ふふっ、ごめ」
イッチーのお怒りで目が覚めたオレは、思わず爆笑しちゃった。中にいるバロンもすっかり萎えて、さすがランちゃん。マスターコースの時、だてにオレの先輩してないね。
バロンは、オレの中からペニスを抜いた。すっかり小さくなっちゃったけど、それでもおっきくて。オレは出る時に声が出ちゃう。
「ばーろんっ」
オレの隣で、もう一度溜息をついたバロン。ヤる気が削がれちゃって、疲れたかんじ。
バロンに抱きつくと、じろっと睨まれた。うーん、からかいすぎたかな?
「もう、怒らないで。ね?」
「……怒ってなどない」
「ホント?」
「……呆れているだけだ」
「……っ、プッ」
「レン」
「ぷ、くっ、ふふふっ、ご、ごめっ」
ごめんね、バロン。でも、それは怒ってるって言うんだと思うよ?って、笑いながら言っても多分説得力ないけど。
「ね、キゲン治して?」
バロンは、オレを見ない。笑いすぎちゃったからスネちゃった。
でも、寂しいよ?
「なんでもするから。ね?バロン」
とびきり甘い声でおねだり。オマケにすりすりって抱きついちゃって、甘えてみたり。
なんだかんだいってバロンはオレに甘い。こうすれば、オレを見てくれる。
「なんでも?」
「うん。だから、ね?」
ほら、アイスブルーがオレを見つめる。
「キゲン、治してオレを見てくれないと、寂しいな・・・」
ここは上目遣いもオマケしちゃう。バロンのキゲンがなおるなら安いもんさ。
「いいだろう」
バロンの長い指が、オレの顎を捉えた。
やった。成功。と、笑ったのも束の間。
バロンの唇がそれはそれは蠱惑的に歪む。
「レン。確か明日はオフだったな」
「え?う、うん?」
「喜べ。俺は三日オフだ」
「…………はい?」
それは、つまり………?
「覚悟しておけ」
三日ということは、今日と、明日と、明後日?
「今日の晩から楽しみだな」
艶やかに、バロンは笑った。
「や、ヤサシクシテネ」
「ああ。優しくしてやる」
なんだか、イヤな予感しかしないんですけど。
とりあえず、
「きょ、今日は聖川の家に泊まろうかなー……なんてウソデススイマセンデシタ」
一瞬、バロンの後ろに氷山が見えた。
バロンは、にっこりと笑った。
「それでは、私は最愛の人を迎えに行きましょう」
「マッスグカエッテキマス」
「おや?ご友人の家でごゆっくりお寛ぎなさってください」
「ば、バロンだーいすき!早く帰ってきたいなー!」
そんなことになったら、聖川に絶対怒られるし、変な目で見られるに決まってるじゃないか!分かってるくせに、いじわる!
バロンは、オレの手をとって、恭しく口付けた。
「では、最愛の人よ。今宵は楽しみにしております」
「は、はいっ」
オレのオフは二日間。明日と明後日。
次の仕事は、大丈夫かな、オレ。
「バロン、あのっ」
「どうかされましたか?」
「イエナニモ」
仕事に響かない程度でお願いします、なんて言えなかった。
オレが弱いって知ってて、わざとテレビ用の執事キャラを使ってくるなんてズルい。
オレ、次の仕事まで生きてるかな?
     
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