オレだけを見てる可愛いアナタ
「ランちゃん」
「んー」
「らーんちゃん」
「ん」
ランちゃんは、基本的にストイックだと思う。感情をあまり表すことがなくて、淡々としている。アイドルに対する姿勢も、人一倍練習に励んだり、筋トレも欠かさなかったり、ってかんじで自分に厳しい。
何より凄いのは、それがきちんと実を結んでるってこと。頑張ってもどうにもならないことなんて世の中には五万と溢れてるのに、ランちゃんは機会をちゃんと掴んでる。
ランちゃんのファンは、そんなランちゃんに男らしさを見てるレディだったり、同じ男として応援して元気付けられてる男だったりする。オレとは大違いだ。
「ランちゃん、そろそろ離してよ」
「んー……」
生返事に、仕方ないなぁって笑いながら、実は嬉しかったりする。
男らしいランちゃん。けれど、オレの前でだけは可愛いランちゃん。
ついこの間までは、オレの前でも変わらなかった。ストイックで、クールに見えた。時々マジメに面白いことを言っていたりするもんだから笑っちゃったりするけど。
でも、
『黙って俺だけを見てろ』
あの日から、ランちゃんは変わった。
ううん。変わったのは、オレもかもしれない。
オレがランちゃんのことを好きで告白して始まった関係。ランちゃんも好きだって言ってくれたけど、全然自信が持てなくて当てつけるみたいにレディを口説きまくった。フェミニストなんて言われてるけど、心の中ではレディ達を羨んでた。オレもレディだったら、ランちゃんに臆面もなく好きって言って、自信が持てたのかなって。
段々と口説くのも疲れて、嫌になって、けどやめられなくて。そんな負の連鎖を築いてた時。
ランちゃんはオレに言ってくれた。
翌日のトップニュースになって、事務所から怒られても知るかって蹴っ飛ばして。オレを誰かにとられるくらいなら、アイドルも辞める。海外に拠点を移して二人で暮らす、って啖呵をきってくれた。
正直、ランちゃんがそんなことを考えてるとも言ってくれるとも露ほども思っていなかったので感動して泣いた。ランちゃんを試すような真似して、自分に自信が持てないことの言い訳にしてたのに。ランちゃんはちゃんとオレを好きだって言ってくれたし、好きってことを隠しもしなかった。
それからは、人前でも堂々とオレと手を繋いだり、キスしたり。好きってことを表してくれた。
そして、二人きりになると途端に可愛くなる。みんなの前では男らしいのに、オレがちょっと離れたり、テレビとか雑誌とかゲームに意識をとられたりすると、抱きついてくるようになった。離して、って言っても離れない。ぐりぐりと頭を押し付けて、がぶがぶと首筋を噛む。
俺にかまえ、って言ってるみたいで可愛い。すごく可愛い。
あの男らしいランちゃんが、オレの前ではかまえ、って甘えるのだ。
「ランちゃん」
とびきり甘え声で呼べば、なんだ、って言うみたいに頭を肩に乗せてくる。一応聞く姿勢のようだ。
「らーんちゃん」
振り向いて、キスをした。いたずらっぽく笑って、ぺろりと舌を舐める。
すると、途端にソファーに押し倒された。
首筋に顔を埋めて、ぺろぺろと舐めたり、がぶがぶと噛んでみたりしてくる。もぞもぞと動く頭が可愛い。タンポポ頭じゃない、セットのされてない頭を触る。ふわふわとして、触り心地がいい。
「ランちゃん」
呼んだら、顔を上げてくれる。カラコンの入ってない目が、オレを見つめる。オレしか見てない、目。
「さびしい、な」
唇を指でノックする。
すぐさまおねだりを聞いて、絡みつく唇。歯も剥き出しにして、愛される。
薄く口を開け、舌をのぞかせれば、絡め取られた。根元から撫でるように、口腔の奥まで。
負けじと応えるけど、愛撫をされてるみたいに気持ち良くなって、一分もしないうちにへにゃへにゃと白旗をあげた。受け入れるだけになって、頬にはねっとりとした唾液が伝って、ぞくりとした。
「は……ふ、ぁ」
エッチなことをしてるみたいだ。でも、オレもランちゃんもそんな気はなくて、ただキスしたいだけ。
意外かもしれないが、付き合って一年は経つのにあまり本番に突入したことはない。寧ろ、キスが多いと思う。あとは、ランちゃんの噛み癖。
オレもランちゃんも淡白な方ではない。だけど、キスの方が好きで、セックスの時も噛み付かれたりキスしながらしてる。噛まれたり、キスされたりする方が好き。だなんておかしい。
でも、身体に残った噛み跡とか、ランちゃんのキスの感触に、後でニヤニヤしちゃう。
「ぁア、ん、う、うン……」
今日はなんとなくそんな気になって、最後までした。お腹の中がランちゃんでいっぱいで苦しい。
ヤるとなったらねちっこくて、回数は多くなる。オレもランちゃんに噛み付いたり、キスしかけたり、ってお互いに攻める方が合ってる。
「ふ、ぅ……ら、んちゃ……」
「レン」
「ぁ、ア……アアッ」
ガリッと、喉仏を噛まれる。血が出て裂けたんじゃないかってくらい痛くて、熱い。
なのに、感じてしまって、ぴょこんと勃ちあがるは、中にいるランちゃんを締め付けてしまうは。我ながら正直すぎた。
ランちゃんは、ガツガツと腰を叩きつけて、オレは喘ぎ声を堪えることなく漏らした。
終わって、一度抜いて、ベッドに倒れこむ。ふうふうと、荒い息を吐いて、呼吸を整える。
ランちゃんは後ろからオレを抱き締めて、がぶがぶと噛んでる。たまにすんすんとにおいを嗅いでる。
やっぱりランちゃんは可愛い。
ぐりぐりと、頭をぴょんぴょん飛び跳ねていない頭に押し付けた。
「ふふ、可愛い。ランちゃん」
「頭大丈夫か」
ぺろ、と首筋を舐められる。大丈夫か、なんて言いながらそんなことをするんだから可愛いったらありゃしない。
「もう、可愛いんだから」
頭を引き寄せると、ランちゃんは首筋に顔を埋めた。
「ふふ、ラーンちゃん」
「レン」
目が合って、またオレたちはキスをした。
オレしか見てない、この目が可愛いなんて。多分言ったら病院すすめられるかも。
     
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