the First night
 その後、ブーケトスが行われた。
 ブーケは、なんと寿嶺二の手に渡った。
「えっ、ぼくっ?」
「丁度いいな」
「えっ、ランちゃんっ?」
 と、先輩アイドルの熱愛もこの場で発覚するという珍事件があったが。
 因みに、黒崎蘭丸は平然としていたが耳は赤くなっていたし、寿嶺二は真っ赤だった。一ノ瀬トキヤは卒倒し、四ノ宮那月に支えられていたが、聖川真斗はキラキラとした目で「おめでとうございます!」と言っていた。
(オレの結婚式じゃなかったっけ?)
 と思ったのは仕方がない。
 そして、夜。
「……イッキにこんな趣味があったのかい?」
「うん。レンに似合うと思って。可愛いよ」
 まったく邪気のない笑みを返され、神宮司レンは言葉に詰まった。邪気を物凄く感じるのは多分気のせいじゃない。
 神宮司レンと一十木音也は、とあるホテルのスイートルームに泊まることになった。
 スターリッシュ、カルテットナイトだけでなく、ヘブンズも含めたどんちゃん騒ぎの後、すっかりくたくたになって到着したのがつい先刻のこと。すぐさま一十木音也に着換えろと急き立てられ、身に付けた衣装は―――、
「なんで、ウェディングドレスなの?しかもここで」
 真っ白なウェディングドレス。肩は出ており、胸にはパッドがあり、程良い膨らみを演出している。スカート丈は短く、ガーターベルトが見えてしまう。
 一十木音也は感心したようにじっくり眺めた。
「いいね。やっぱりレンにはミニが映えるよ」
「いや映えなくていいんだけどね」
「の割にはちゃんとパンティーも穿いてるんだね」
「きゃあ!」
 ぴら、とスカートを捲られる。咄嗟に隠そうとしたが、一十木音也は強引に捲った。
 そこは、真っ白なレディースもののパンティーが神宮司レンの秘部を隠していた。収まりきらないものを収めようとしているため膨らんでいる。
 鏡を見て、なんで素直に着たんだろう。と後悔したのが後の祭り。一十木音也に連行されて、ベッドに下ろされた。お姫様だっこで運ばれ、羞恥で爆発するかと思った。
「レン……」
「ん……」
 唇が重なる。神宮司レンは素直に応えた。
 重ねるものが、舌を絡めるものになるのにそう時間はかからなかった。
 一十木音也の舌が、唇をノックした。恥ずかしさも相まってなかなか開けなかったが、もう一度ノックされれば応えてしまった。
 薄く開かれた唇の中に侵入する、舌が口内を蹂躙する。余すことなく舐め尽くす。舌で触れるように。
 まったく触れられない舌が寂しくなり、そっと伸ばすと、待っていたかのように絡めとられた。
「ん、ふ……ん、ん」
「ん……」
 舌でお互いに触れ合うようだった。
 神宮司レンは一十木音也にしがみつき、求めに応える。
 口内を蹂躙しながらも、一十木音也は神宮司レンの胸を鷲掴んだ。パッドがあるというのに、直接触れられたかのように震える。
 決して、神宮司レンの胸に触ることはなかった。愛撫を施すのは、パッドだった。
「ふ、ン……ん、ン」
 そこに神宮司レンの胸があるように。が、刺激はあるはずもなく、矛盾に神宮司レンはもどかしくなった。
 一十木音也に触って、と胸を押しつける。が、それもかわされてしまった。
 意地悪な顔を見上げる。本当に意地悪な顔をしていた。
(悔しい……)
 まさか、こんな時まで意地悪をされるとは露程も想像していなかった。
 一十木音也の胸を押す。簡単に距離が出来た。
「……イッキ」
「ん?どうした、レン」
「……いじわる」
「なんのことかな」
 すっとぼけるなんて憎たらしい。
 だが、一十木音也は更にあくどい顔を披露した。
「それは、夫婦になったってのにまだあだ名で呼ぶこと?」
 神宮司レンは天を仰いだ。
(それか……)
 ずっと名前を呼んで、と言われていたが、神宮司レンはのらりくらりとかわしていた。今更という気もしたし、呼びやすかったのもある。
(恥ずかしい、なんて……言えないじゃないか)
 何より、長年呼び慣れたものを変えるなんて、恋人みたいだったから出来なかった。
「もう夫婦になったんだよね?今がちょうどいいんじゃない?スターリッシュもカルテットナイトも、ヘブンズも知ってるんだよ?」
 下手したら月宮林檎とか、日向龍也とか、はてはシャイニング早乙女にも知られていそうだ。まさかレイジング鳳には知られていないだろう。
 どうやら今回ばかりは譲る気はないらしい。
 結婚式もほぼ騙し討ちみたいなものだったのに、とは思ったが言わない。
 望んでいたのは、神宮司レンとて同じだ。
 だから、
「……お、おと、や……」
 このプレゼントの代わりに。
「うん。なあに、レン」
 急に恥ずかしさが襲って、厚い胸板に顔を埋めた。
 今ではすっかり神宮司レンの身長も追い抜いて、すっぽり収まってしまうほどの男になってしまった。天衣無縫な性格が人気を付していたが、ここのところ男らしさも加わってファンの幅が広がりつつある。デビューの頃から軟派な性格で人気を集めていた神宮司レンとは対照的に。
 ちゅ、ちゅ、と両頬に唇が降る。
「ありがとう、レン」
「おとや……」
 ぱあっ、と花が開いたような笑顔。こんなことなら、初めから読んでおけばよかった。
 一十木音也の手が、背中に滑り、ファスナーが下ろされた。
 ウェディングドレスから、神宮司レンの上半身が晒される。
「キレイだね……」
「……はずかしいな」
 そろ、と胸に触れる指。やっぱり温かい。一十木音也の手が冷たかったことなんてなかった。
 胸の飾りに触れる。撫ぜるように、慎重に。性急にむしゃぶりつくのがいつものことなのに、今日はやけに丁寧だった。
(同じ、なのかな……)
 神宮司レンがこの日が特別なのと同じように、一十木音也も。そうだといい。いや、きっとそうだ。
 ぷっくりと尖りを帯びた先端をなぞる。指でコリコリと揉み、反対の手は優しく触れる。
「どうしたの」
「うん。なんか、可愛いなって思って」
「……イッキは恥ずかしいことばっかり言うんだから、っあ!」
「違うでしょ」
「……おとや」
 咎めるようにぺろ、と舐められた。
「レンのここはエッチだね。おれが触ったら、恥ずかしがって、ぺたんこになっちゃった」
「それは、パッ、んんっ」
「ね、どんな気持ち?エッチなおっぱいいじめられて」
ホントたちが悪い。
天真爛漫とは誰が言ったのか。邪気のない笑顔を浮かべながら、そのくせ邪気に満ちた睦言を繰り出す男に翻弄されていた。
神宮寺レンよりも太い指が、胸の小粒なぷっくりとした飾りを捕らえて離さない。コリコリと弄っては捻り潰す。
いつのまにやら、胸だけで感じれるようになった神宮寺レンは才能があったのか、はたまた恋人の手練か。いずれにしろ歓迎できるものではない。
「ああ、エッチなのはこっちもだったね」
ミニスカートが捲られた。
そこは、張り詰めた陰茎が出せとキツキツのパンティの中で猛り、涎を垂らして暴れていた。すうすうとする感覚と、背徳感に神宮寺レンは震えた。無垢な白を着て、こんなことをしている。夫となった男に触られて、はしたなく男の象徴を起こし、霰もない姿をしている。
「あーあ。折角特注したのにレンが濡らすから」
「おとやがオレをいじめるから、でしょ?」
「ふーん、反省しないんだ」
「んんぅっ」
パンティをくいっと上げられた。陰茎が挟まり、背筋に快感が駆け抜ける。
一十木音也は、神宮寺レンを冷めた目で見下ろす。
「ここ、ダラダラヨダレ垂らして、ちんこもおっきくしちゃってるのに?」
「ん、んっ」
くいっ、くいっ、と引っ張られるたびに快感が伝う。
しかし、神宮寺レンの夫は優しくなかった。無邪気な顔とは裏腹に、悪どかった。
「じゃあ、ちんこ、ちょん切っちゃおうか?」
「……え」
神宮寺レンは、耳を疑った。
嘘だ。一十木音也が、そんなことを言うはずがない。
しかし、その目は暗く淀んでいた。
「だって、レンのせいじゃないんでしょ?だったら、ここが悪いんだよ。ね?」
ごくり。知らず、唾を飲み込む。
一十木音也なら躊躇なくやる気がした。元々レディを口説きまくっていた神宮寺レンの、女を抱ける部分なんて要らないと思っている節がある。
そこを切られる想像をするだけで、ひゅっとした感じがする。
一十木音也は、にっこり笑った。
「嘘だよ」
「え?」
「でも」
神宮寺レンは、身体をひっくり返され四つん這いになった。
「貞操帯は着けるよね?」
「え」
さっと、蒼白を通り越して土気色になる。
一十木音也に抱かれているとはいえ、男としての矜持は捨てていない。女として抱かれているつもりもない。
「ここ、俺以外に触られたらどうすんの?ヨダレ垂らしてちょうだいって言っちゃうでしょ?ううん。言わなくても、ぶちこまれちゃうかもね。レンなら」
「お、おと……」
そうだ。
この男は、一十木音也という男は、相当嫉妬深い男だ。夫婦となる前から、メンバーと話しているだけで割り込んでくるくらいには。
その男が、自分のものになることを誓った恋人を放っておくはずがなかった。万に一つの可能性も握り潰すに決まっている。
「ね、レン」
「あアッ!」
くぃ、と後孔にパンティが食い込む。まだ触られてもいないのに、きゅうと疼いた。
「ほら、こんなになってる」
後孔が、開かれる。くぱぁ、と一十木音也の目に触れた。まるで視線で触られているみたいで、きゅんきゅんと啼いた。
「どうすんの。こうやって」
「いぃイッ」
ふ、と息がかかった。
次いで、柔らかい感触が触れた。キスをされたのだと気付く。
神宮寺レンが恐る恐る振り返ると、後孔に顔を埋めようとしている一十木音也と視線がかち合った。
無邪気な目が、仄暗いものを宿して笑う。
「あ、あァあッ」
にゅる、と中に侵入するもの。覚えがありすぎて、身体が沸騰するかと思った。
キスをする度、神宮寺レンを翻弄して止まない。
「あ、だ、だめっ、……あァッ」
入口付近をそろりと動いたかと思えば、ずっぽと出て行き、また侵入してくる。味わうように中をぐるりと回った。
ずろろと、吸われた時には神宮寺レンは身体を支えることも出来なくなった。
へたりと上半身をベッドに預ける。下半身は支えられており、突き出す格好になっていた。
「あ、あっ、おとや、おとやぁ、う、あ」
「ね?レン。どうするの?」
悪魔の囁きが聞こえる。
優しい声で、神宮寺レンにそっと選択肢を与える。
中枢神経からどろどろにされて、神宮寺レンは意識も朦朧としながら切なく疼いた。舌を抜かれ、後孔は欲しがっていた。中に埋めて満たしてくれるものを。
「着けるよね、レン」
それが、最後だった。
「つ、つける、つけるからぁ!おとやのおくさんにしてぇ!」
「っ、クソッ」
「やぁあああっ!」
一瞬だった。
後孔から、身を裂かれる。息も詰まり、空気を求めてはくはくと口を開く。
胸が苦しい。五月蝿くて、早く脈打つ。
「反則だよ、レン!」
「あっ、アッ、おとや、おとやァッ」
「ごめんなさい、は!」
パンッ。尻を叩かれた。一度や二度ではなく、何度も。神宮寺レンが意識も薄まり、言葉も理解出来ない中。
「ご、ごめ、なさ……あァあああ、だめ、だめぇえええっ」
「うん。いいよ」
「あ、い、イく、イっちゃ、は、あァああああっ」
「く……っ」
腹の中に叩きつけられるどろっとしたもの。神宮寺レンは、達ながら、腹の中に出されたものにも感じた。
「お、とや」
「ん……」
「かお、みてしたい」
一十木音也は、目を丸くした。
そして、花嫁からの珍しいおねだりに満面の笑みで頷いた。
「ふ、ぁ、……ん、ちゅ……う、おと、ん、ふっ」
向き合って座る形になり、神宮寺レンは一十木音也にしがみつく。
ウェディングドレスは二人の出した精液で白く染まり、宛ら背徳の花嫁。二人の劣情を煽った。
「ん、おと、ん、ンッ」
「レン。かわい」
「ん、ぅ……」
下からの容赦ない律動が、神宮寺レンを深く貫いた。
神宮寺レンは、薄まる意識の中、必死に一十木音也にキスを求めた。いつもより甘えん坊になって、キスをしてくる花嫁に一十木音也は欲に濡れた目で一瞬たりとも見逃さなかった。瞬き一つさえも惜しい。
しかし、折角のウェディングドレスだ。堪能しなくては勿体無い。
「レン。はい、これ持って。そうそう」
神宮寺レンの口にウェディングドレスのスカートを咥えさせ、一十木音也は腰をしっかり掴んだ。
「離さないで、ね!」
「んんぅっ!ん、んふ、ふーッ」
しっかりと言い付けを守り、一十木音也の攻めに嬌声をあげる恋人が可愛くて仕方ない。
(次は手かな)
口もいいが、嬌声が聞こえにくい。
なんてことを考えつつも、花嫁の姿をしっかり焼き付け、同時に達した。
「んンぅうううううっ」
ぴゅる、ぴゅる、と神宮寺レンの陰茎から白濁が飛び散る。
恍惚と、荒い息を紡ぎながらも、やはりウェディングドレスは離さない。
「く、うっ」
「ん、ふ……」
中に出され、神宮寺レンはまた達した。
「レン」
「ん、おとや……」
ウェディングドレスを離してやり、抱き締めてキスをする。
真っ赤に、涙で濡れた目がとろりと悦ぶ。
一十木音也は、花嫁の左手薬指の指輪を撫ぜた。
そして、照れたように笑った。
     
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