うちの本丸は朝からにぎやかだ。
「鶴さーんあれとって」
「ほい」
「ごめん鶴さん、それかき回しといて」
「おう」
「あ、鶴さん。お願い!」
「いいぜ」
「鶴さん、んっ」
「おう」
訂正。
うちの本丸は朝からウザったい。目の前でイチャつきを繰り広げられた挙句キスまでしていきやがった、と審神者は頬をひくつかせた。
こんなもの見慣れた光景だ。が、正直言って独り身である審神者にとって刺さるものがあることもまた事実。
早く別れろ…喧嘩しろと念を送りつけて、食器を運んだ。関わるとろくなことがないのはすでに学んでいる。今日も念を送り飛ばすだけにして、静かに席に着いた。
「ごめん、鶴さんありがと」
「いいってことよ」
本丸の住人たちは慣れたもので、最早見もしていない。また彼らがちゅっちゅしているところを気にもとめていない。あの歌仙ですら昔ははしたないだの風流ではないと叱り飛ばしていたのに、つまみ食いする青江の手をぴしゃりと叩いていた。
ここは俺の本丸なのだが。喉元まで出かかったが、今日も言葉を飲み込む。
「なぁ、光。光坊」
「もう鶴さん。また?」
「たのむ」
甘えた声で、ねだる。正直今のは下半身に来た。
燭台切は仕方ないなぁと言って、広間を後にした。しっかりと鶴丸の手を握って。
ここは俺の本丸なんだがなぁ。
広間を後にし、物陰に隠れた瞬間鶴丸は燭台切の厚い胸板に飛びついた。そして、薄い唇へと同じものを重ねる。
「ん、む…」
「はむ、ん、ん」
唇が、手が、あつい。
火傷しているかのような感覚は、正直ゾクリとする。クセになる。
腰に回った手が、優しく撫ぜる。
「光坊はすっかりいけない子だな」
「は、誰のせいと思ってんの」
「はは」
もう一度、重ねる。あつい。熱が伝わり、徐々に焼かれていくような感覚。一瞬たりとも離れられない。我慢できない。誰があきれようとも。
「行く?」
「まぁだ」
まだ行かせない。
おまえは俺のものだ。
     
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テーマ「人外ファンタジー」
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