真紅の刀骨人形
暗闇の中でも光そうな赤色が、ふわりと歪む。主という存在に恍惚としているようだった。きょろりきょろりと動く忙しなさに安堵を禁じ得なかった。
人の皮を与えられたとは思えぬほど整った顔立ちであったが、ようく見ると丁寧に手が加えられていた。繊細で、彼自身の性格が察せられる。
薄い唇が主と呼ぶたび、閨へと誘う雰囲気があった。同族の傾国とも異なる。
幽鬼の如く、言い方を変えるならば白磁のような、透けてしまいそうな白さ。女性ならば喉から手を出して欲するだろう。客をとればすぐさま空きがなくなるだろう。その愛らしくも、艶のようなものを感じさせる顔を屈服させたい欲に素直にじゅんじるであろう。
名を呼ぶと、ふっと笑う。言葉が紡ぐ。表情から、愛して、と。
ああ。
ああ。
愛してやろう。
いついつまでも。
手を伸ばすと飛び込んでくる可愛らしい男が、よもや神の類だとはついぞ思えなかった。宛ら飲み込まれるが如く、腕に抱く。
相好を綻ばせるニンゲンモドキへ、偽りの本音を吐く。
愛してるよ。
ああ、本当に。
可愛いおまえを手放せるはずがない。
頬を滑らせた指に、すりよらせた顔は人間のものではなかった。
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