シーツがまとわりついた身体を鬱陶しげに払って、素っ裸のままベランダへ出た。散々抱き潰された身体はギシギシと悲鳴をあげ、いつものことながらさすりおさえて紫煙を燻らせた。向かい側は絶景ーーなわけもなく、同じくらいのマンションが建っている。この姿を見られれば通報されること間違いない。
開放感に溢れた格好で大股をかっぴらいてと、実に野生的である。
一本、二本、三本。時間の経過を放って箱に入っているものを次々と吸うと刻々と時を稼いで、比例して体温も奪われていく。陽が昇り、明けに染め、昇り切ったところで薄水色が覆った。
紫煙がのぼってゆく先を眺めつためつ。
するりと冷えた腹に細い指が滑る。肩から白い指が這い絡まって、うっそりと肢体を胸の中へ閉じ込める。
「まっぱかよ」
尻に当たる硬いものの感触。呆れた口調へ、吐息だけで笑う。
閉じ込めることに成功するした腕は、もたれかかるとぎゅうっと決して小さくはない身体を抱きしめた。
首筋にすりよる。香る、いつもと違うにおい。
身なりに殊更気を使う男だからか、香水も選んでいる。雰囲気に似合ったうっとりするものだが、それが消えたものもなかなか良い。
顎を傾け、唇を合わせた。後頭部を掴むと、顎を掴まれる。
「……はっ」
「ショーゴ。帰っておいで」
起きた時に君がいなくて寂しかったんだ。
ひくほど素直な男は、それすらも分かっているのだろう。
「しゃーねーな」
縋り付く腕と、弱々しい声。計算ずくめであるそれが、本音だなんてバカなやつ。
にっこりと笑った男に連れられ、今日は一日ベッドの住人と化すことが決定づけられた。


氷灰
     
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