「あーおみねっち」
「あ?んだよ」
「今日お誕生日でしょ?プレゼント。なにがいっスか?」
「あー……」
年に一度の誕生日。この日は仕事も空けて彼のためだけに時間を使う。いつも誕生日なんて忘れてる張本人はグラビアアイドルの写真集よこせだなんて言うけれど。
が、この日は違った。
珍しく歯切れ悪く明後日の方向を見たかと思えば目線があう。それを何度か繰り返して、やっぱり目を逸らされる。
「?」
なんだろう。気持ち悪い。こんな青峰っちはじめて。
「あー。あのな、黄瀬」
「? はいっス」
「あー……」
やだあの青峰っちが言い淀んでる。
超気持ち悪い。
「て、てめっ、顔に出てんだよ!」
「あ、すんませんっス」
「テメー……」
口元をおさえ、頬を挟んで、目をキリッとさせた。多分オレ今カッコいい。
「あー……」
あの青峰っちがこんなに躊躇うなんてなんだろう。天変地異の前触れ?とうとう頭までアホ峰になっちゃった?
元々残念な頭が患っちゃったかー。片鱗はあったけど。
なんて思ってると、青峰っちは片膝をついた。俺の手をガングロな手がとって、視線を合わす。
「黄瀬」「は、い……」
「この先ずっとおまえの一年をくれ」
「は、……?」
言葉を失うとは、正にこのことだろう。
あんぐりと大口を開ける俺とは正反対に、青峰っちは真摯な顔付きで続けた。
「毎年オレの誕生日にはその先一年のおまえをくれ。一年ずつ、ずっと」
「それ、て…」
言葉は返らなかった。言葉では。
「なに、いってんスか…」
バカじゃないの? アンタそんな柄かよ。気色悪いって。
「黄瀬」
そんな優しい声で呼ぶなんて。アンタそんな声出来るんだったらいつもやってよ。いっつもオレには意地悪なんだから。
「愛してる」
そんな声で、そんな言葉を言わないで。何度も聞きたくなってしまうから。
ケーキのキャンドルは役立たずのまま、冷蔵庫の中で日付を越えた。
熱でもあんじゃないの?今なら冗談でもドッキリでも笑って許してあげるよ。バカっておもいっきりぶったたくだけで。
「にあわない…」
「ああ」
「キザ」
「ああ」
「っ、……」
言葉が浮かび、消えぬ間に紡げぬように喉を締め付けられる。
やり場を失ったオレを黒い手が包んだ。
「黄瀬」
そんな優しい声で呼ぶなんて。アンタそんな声出来るんだったらいつもやってよ。いっつもオレには意地悪なんだから。
「愛してる」
そんな声で、そんな言葉を言わないで。何度も聞きたくなってしまうから。
ケーキのキャンドルは役立たずのまま、冷蔵庫の中で日付を越えた。

青黄 青峰生誕祭




     
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