目を覚ます姫君
「どーうしたの?」
「……」
 この人は、時折僕の膝の上で丸くなる。
 なんの前触れもなく、僕を座らせて、膝の上に頭を乗せて仔猫みたいにぎゅうっとなる。
 なにがあったのか訊ねても応えは返らない。そのうち寝息が聞こえてきて、肩の力が抜ける。普段は驚きを求めてどこかしこへ行ってしまう。僕の手なんて離れて、なくても生きていけるみたいに。そのうち姿も見えなくなって、でもいるって、どこかにいるって感じだけはあって。それだけが頼り。
 多分恋仲なんだろうけれど、彼がそれらしい雰囲気を表にすることはなかった。求めてしまうことはきっと琴線に触れるのだろうけれど、もうルール上の敷かれた関係なんてこりごりだ。
 手を振り払ってもいいから、その理由も全部教えてほしい。僕はいつだってあなたの心の一番近くにいたい。
 眠る横顔をそっと撫でつけて、襖を閉めた。外界から閉ざされ、覆いかぶさる影にあなたはまだ気付かない。
     
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