愛を鳴け!
レンレンと僕ちんが仲悪いだって?
おもしろいこと言うね〜。
僕達は仲悪くなんてないよ。すごくいい。
「レーンレン」
「ゲッ」
「ゲッって何かな? ねぇねぇ何かなぁ?」
「ナンデモナイヨ!」
「そう? ならいんだけど」
明らかに目が泳いでるのなんて、ちゃ〜ぁんと分かってる。知らないフリ。
誤魔化せた、って思ってるかもしれないけど甘いよ。ううん。レンレンもそろそろ学習してる頃だから安心は出来ないって思ってるかもね。だったら正解。花丸満点をあげよう。
「ね、レンレン」
一歩後退った。
追いつめる? バカだね。そんなことしないよ。警戒を煽るだけじゃないか。
ああ、でも。君なら分かっちゃうかな?
「ご奉仕してあ・げ・る
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」
「……」
顔面蒼白になったレンレンは、抗うことも出来ずにベッドに連行されたのでした。
なんの冗談だ。
レンは、眼前に広がる受け入れがたい光景に溜息すら出なかった。呆れているのではない。最早これは恐怖だ。
「レンレン、ちゅうは?」
「……」
「んもうっ! レーンレンッ!」
「……」
この人一体何がしたいんだろう。
押し倒されている状況下、頭は酷く冷めてしまっていた。それもこれも全てこの男のせいだ。
彼――寿嶺二は、レンの上に跨っていた。ベッドに腕をつくレンを追いつめる形で、逃れることも出来ない体勢で。そこまではいい。
そこまで、は。
レンは嶺二の姿を改めてまじまじと眺める。
胸元のスカーフと、首から肩、背中にかけてのセーラーは清純さを彷彿とさせる。動くたびにはらりはらりと揺れ動く襟。赤いスカーフと白い襟が彼によく似合っている。
そして、スカート。膝丈より少し下にあって、足をあまり見せない仕様だ。短くする方が流行っているらしいが、長い方が清楚で可愛らしいと思う。
女の子であれば。
残念ながら、彼は女の子ではない。勿論、心も。立派な成人男子だ。しかもレンより年上。
何が悲しくて男の女装なんて見ないといけないのか。
「レンレン」
嶺二の手が、レンの両脇に置かれた。ギシリ、とベッドが音をたてる。レンの鼓動を早打ち、目線も合わせられなくさせた。
「レンレン、いたいけなれいこちゃんにちゅうーして」
ん、と差し出された唇。
ああ、もう。溜息が漏れる。
顎をすくい、唇を重ねる。しっとりとした唇に、テラッテラのグロスの味。
「うぇ…」
「ちょっとぉ? レンレン」
「グロスの味はないよ、ブッキー」
「ああ、グロス?」
口の中に広がる苦味。舌を出すと、彼の指がとらえる。
口腔に彼の指が侵入する。口を閉じるわけにもいかないので、なされるがまま。
指は口腔の外周をゆっくり移動した。次いで、舌を挟むとコリコリとこねて弄ぶ。
「んんー」
視線で放して、と言うと、彼は口角を上げた。
「ごめんね、レンレン。おいしくなかったでしょう?」
別に気にしていない。キスは嫌いじゃないし。
それよりも女装の方がよっぽど気になる。
指から解放されると、やっと口を閉じることが出来る解放感を味わう。
「で、なんで女装なんてしているんだい?」
「ん? 撮影でもらったんだぁ」
「……な・ん・で、今着たんだい?」
「んー……」
彼は考えるというより、レンを上から下までじろじろなめまわすように見た。
稍あって、
「好きかなと思って」
彼は告げる。
好き? 女装が? そんなバカな。
だが、言葉を口にする前に彼はにっこりと笑った。
レンの手を取り、自身の方へ導く。
彼はセーラー服の裾をあげた。白い下着と、小さなブラジャーが透けて見えた。真っ平な胸に申し訳程度の、ブラジャーに申し訳が立たないほど。
「ね。好きでしょ?」
固まって動けないことをいいことに、嶺二は下着を捲り、ブラジャーをもう片方の手で下げ、真っ平らな胸に触らせる。そこにある突起に、レンが手を引いた瞬間、力が強まった。
「好きでしょ?」
好き? 何が? どれが?
誰が?
頭は、混乱を極めている。嶺二は逃しはしないとでもいうように、宛ら蛇のようにレンを見詰める。
「ここ」
レンの指が、乳頭にあたった。刹那、漏れた声に肩が震える。
「カリッてすると、イイね」
伏せられた目。
レンの指が、乳頭を押してはぐりぐりと潰す。
嘗てないほど色めいて、劣情を誘う顔を見たことがない。
息を飲むのも忘れた。
「んっ。ね、レンレン」
ふ、と笑む。片方の眼がレンを射抜く。
レンは声を発することもままならず、指が震えてしまっていることに気付きながら止める術もなく、目を逸らすことも出来なかった。目の前で次々と起こる現状を、脳が受け入れたくないと拒絶していた。
「レン」
そして、呼ぶ。男の声が。
「おいで」
差し出された手に、やっとのことでレンは手を伸ばすことが出来た。
「ん、……ちゅ、ぅ」
「こーら。がっつかないの」
胸元にあるオレンジを、嶺二は優しい手つきで撫でた。ふわふわと動く髪が、指をすりぬける。
うんうんと頷きながら、嶺二の胸板に吸い付くレンは理解しているのか。時折舌を使って、汗の雫を舐め取ろうとしてくるものだがらこそばゆくてたまらない。
それに、
「レンレン。お尻、はしたないよ」
「んっ」
「んもう」
一生懸命吸い付きながら、淫に揺れる腰。窘めるも、聞いてはいない。
形のいい尻を触る。筋肉が適度についていて、余分な肉はあまりない。羨ましい。
体型維持に努めているが、レンのそれは天性のものだ。正しく、人を魅了するためだけにあるもの。嶺二の努力を嘲笑うように。
「んっ、レンレン。そこ、気に入っちゃったの?」
執拗に胸の狭間のあたりを舐める。谷間があったらちょうどそこに彼の顔を挟めただろう。それはそれでいいかもしれない。
ブラジャーも下着も剥ぎ取っていない。
彼の顔が下着の下から覗くと、無性に愛らしくて、抱き締めてしまいたくなった。
「レンレン、いいよ」
終了の合図。顎をすくうと、唇の端から唾液が零れていた。指で拭うと、ぼんやりと眺めていた。
吐息が、顔にかかる。生温いそれが、抑え込んでいるものまで湧き上がらせる。
身体をベッドに押し倒す。柔らかな音とともに、レンの身体はいとも簡単に組み敷かれた。
見上げたレンの目と視線が重なった。
「どうしたの、レンレン。ぼんやりしちゃって」
いつもならば軽口の応酬でもするところだが、今日はだんまりだ。それではあまりに素っ気ない。
様子が違うのは事実だが、どうも何かあるとも違う気がする。
取り敢えず放っておくことにして、嶺二はローションを温めた。掌で適温まで温め、試しに垂らして冷たくないことを確かめてから窄まっている後ろへ指を入れる。ぐぬぬ、と嶺二を迎え入れた中は思ったよりも熱さはなかった。
「ん…」
レンはいつも耐える。唇を噛み締めて、違和感をやり過ごそうとする。幾度身体を重ねようとも、嶺二が心を配ろうとも、どうにも最初の違和感は拭えないようだ。
しかし、だからと言って、前を弄って快感に変えてやるのも癪だ。
ローションを足し、指を奥へ、増やす。
滑りを帯びた中はぐっぷぐっぷと奥へと案内し、拒む肉襞を戒める。肉襞は未だ身動きは出来るようだ。
奥へ奥へと進みつつ、引くこともあった。引く時は特に違和感が酷いようで、レンは苦しげな声をあげる。奥へと進んだ時の我慢するようなそれではなく、腹を押し潰されたような。
彼は気付いているだろうか。嶺二が、その声が好きだということに。
「ん、んっ、んん」
「レンレン」
「ふっ、ん…」
「レンレン」
「ふ、んんっ」
双眸が嶺二をじっと映す。なぁに? と。
嶺二はふと笑むと、レンの身体を抱いた。熱に浮かれた身体がされるがまま、嶺二の腕の中におさまった。
「愛してる」
肩口で、レンが微笑んだ音が聞こえた。
嶺二は、レンの唇を乱暴に奪うと、指を抜いて滾った肉棒を埋めた。
「あ、はぁああっ」
「く、うっ」
急激な挿入に、レンの中が痛いくらいしまった。
レンは仰け反り、チカチカと点滅しているような快楽に追いつくので必死だった。何が起こったのか。
理解する前に、嶺二はレンの片足を肩に抱えた。
「あっ、はぁああん!」
「締め、すぎ…っ」
「ぶ、きっ。ぶっきっ」
「息、吐いててね」
忠告と同時に、奥を穿つ。
レンは息をつく間もなく、腹の中を貫かんとするものを受け入れさせられた。
休む間もなく、レンの中を食い散らかす肉棒。狭い道を広げる。
レンを、変えていく。
「は、ああ……あ…」
「レンレン」
「ぶ、き…」
頬を包む。涙に濡れて、可哀想な頬を拭ってやる。レンの眼は涙をため、しかし視線は嶺二から逸らされることがない。
吐息もかかる距離だった。
キスを降らす距離だった。
嶺二はぐぐぐ、と肉棒を押し付けた。
「ああっ! ないっ。もう、おく、ないっ、から…ぁっ」
「うん、ないね」
「ああっ、ないっ。ない、のにぃ!」
「っ、……はっ」
奥の壁をゴリゴリと突き、掻き回す。肉襞を辿るようにすると、殊更良い声で鳴く。
意地悪をしているわけではないのだが、レンはいやいやと泣き始めた。
「泣かないでよ」
「だ、てっ」
「よいしょっと」
「んあっ」
足を抱え直す。期待に潤んだ眼に、にっこりと笑ってやった。
「は、あぁあああっ! あああ、ああいやああああもう! もうっ」
来る強い突き上げに、レンは髪を振り乱して喘いだ。オレンジの髪が右へ、左へ。
嶺二は汗粒を零しながら、眺めていた。
「あああ、や、やっ。もう、や!」
「ぐ…っ」
尻に叩きつけられる男の腰が怖い。中に来る肉棒よりも、直にレンを感じさせる。
その合間にも肉棒はレンを追い上げ、追いつめ、焼き尽くさんばかりの勢いでレンを食らう。食べないでと懇願するレンを、舐るようにじわじわと。
喉元まで食べられた。
一刹那、
「あ、あぁあああっ」
「っ……レンッ」
「ぶっき……」
中に飛沫を叩きつけられる。腹を満たすそれは、レンの中でたぷたぷと揺れた。
「愛してる」
嶺二は、頬に触れて愛を囁いた。
「うん」
噛み付くようなキスと、再開した愛欲に、今度は腕を絡めて鳴いた。
眠りの底へ行ってしまった恋人を横目に、彼はベッドを離れた。
頭を撫でてやると、可愛い声で鳴くので引き留められた。しかし、身体はすっかり汗でべたついている。恋人も洗った手前、自分も身を清めたかった。
起きる気配のない恋人に微笑を残し、彼はバスルームへ足を運んだ。
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