可愛い花には魔王がいる
「お仕置きだね」
 可愛い笑顔が、真っ黒に見えた。










「やあ、レディ。今日はどこへ行くのかな? モチロン、オレとデートだよね?」
「え、あ、あの」
「ふふ。困った顔もカワイイね。さて、どこへ行こうか? そうそう。この間、夜景がステキなレストランに行ったんだよ。レディにも見せてあげたいな」
「ええっ」
 目に見えて慌てだすレディは、本当にカワイイ。
 ちょっとだけイタズラしたくなるくらい。
「どうしたの、レディ」
 顎をすくうと、レディの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。
 もう少しだ。ほくそ笑む。この落ちるか落ちないかのギリギリのゲームが楽しい。
「ねえ、レディ?」
「あ、あの……その……」
 畳み掛けることで、言葉を遮られたことにも気付かない。純粋培養のオヒメサマ。なんてカワイイんだろう!
 後数センチで唇が重なる。
 徐々に近付く距離。
 レディがうっとりと惚ける。
 吐息さえも交わり、絡み、そして、
「へぇ。いいね。ぜひともボクちんもご一緒させてよっ。―――ね?レーンレンッ」
 凍りついた。
「こ、寿先輩!」
 甲高いレディの悲鳴にも似た声が耳元で響き、我に返る。
 錆びついたドアのように、ゆっくりと慎重に振り返る。そこには、満面の笑顔を向ける男。あまり高くない身長、あまり筋肉もついていない体つき。けれど、母性を擽る顔立ち。
「あ、あのっ。寿先輩、これは」
 必死に言い訳を紡ごうとするレディに、背中にひやっとしたものが伝い落ちた。
 余計なことを言う前に塞ごうとした唇を、先に塞いだのは彼だった。
「うん? 後輩ちゃんはボクとランデブーはイヤ?」
「い、いえ。そんなことは……」
「ならよかったぁ。ボクも後輩ちゃんとお出かけしたいなっ」
「あ、いえ。実は、この後に用事があるので……神宮寺さんにもお断りしようと」
「そうだったの? ごめんね! じゃあ、いってらっしゃい」
「は、はいっ」
「レディ、ま……っ」
 まずい。
 一人取り残された状況では、最悪の結果しか想像出来ない。彼を見ることが出来ない。
「レーンレンッ」
 だが、無情にも彼はオレの肩を叩く。
 振り向きたくない。が、振り向かなかったらどうなるかが目に見えていた。
「お仕置きだね」
 ああ、カミサマ。レディを愛することを使命としているというのに、オレの前途には難しか待ち受けていないのは一体どういうことでしょう。
「……ハイ」










 それからのブッキーの行動は早かった。
 ブッキーの部屋に押し込まれ、ベッドに放られる。四肢は麻縄で拘束され、足は開脚。
「ふふ。レンレンはっずかしー!」
 ぺろり。淫靡に唇を舐めて見せた。
「ぶ、ブッキー! これにはワケがあって」
「うん? いいよいいよ!」
「へ?」
「ボクがしたいだけだから」
「……………」
 一体誰かな? この四捨五入で三十路にもなる男を可愛いだとかいうヤツは。
 ど・こ・が・だ!!!!!
 ただの鬼畜じゃないか!
 ブッキーは麻縄で縛られた足をとり、チクチクして痛い部分を舐めた。ゾクリと震えが走った。
「ふふ。今から真っ赤になると思うと嬉しくなっちゃうね」
「ひっ」
 漏れた声は、ブッキーの目の仄暗さを増させた。
 丹念に舐めて、反対の足も同じようにする。手も。
「本当は首にもしてあげたいんだけど、この子が可哀想だからね」
「ぶ、っき」
「だから、この子が生まれたら覚悟しておいてね」
 するりと撫でられた腹は、服の上からでは分からないけれど膨らんでいる。三ヶ月前から、ここに一人の住人が居すわっている。
「でも、お仕置きはお仕置きだよ」
 ザクザクと期待を刈り取られていく。僅かな期待すらも無用だと言わんばかりに。
 ただでさえ縛られ、閉じることもままならない足を開かれる。あまり柔らかい方ではないので痛い。
「あだだだだだ」
「もう! 黙って!」
 こちらのことなどお構いなく、寧ろ煩わしげに中心に顔を埋める。
 茂みを一本一本舐められる。時折向けられる視線は、恐怖と快感がないまぜになったオレを嗤う。
「ふふ。お母さんなのに女の子ばっかり口説いてるのに、まだ触ってもないのに感じちゃうの? お母さんがこんなにエッチだって、この子に教えてあげないとね」
「やだ、ブッキー、や……やだ」
「嫌? どうして? 親子なんだからちゃんとレンレンのことも知ってもらわないと」
「そんな!」
 言うが早いか、茂みから張り詰めた部分へ移動した。
 裏筋をべろんと舐められ、奇声を発する。
 それを皮切りに、はち切れそうな袋にむしゃぶりつき、先端には爪先を忍ばせて抉る、
「う、……ひっ、ぃ」
 付け根の部分も舌と唇を這わせ、余すところなく食らいつくした。
 官能が背中から脳を直撃し、切なさに身動ぎする度に麻縄が食い込んでいく。最初は痛いだけのそれが、徐々に愉悦へと変わっていくことに気付くことも出来ない。
「あぁっ。ぶっき、も、やめ……ね、やめっ」
「んんー?」
「そこっ、そこ、も、いいから!」
「そうなの?」
 うんうんと頷くと、仕方ないなあと笑う。優しいだけの笑顔も、この時ばかりは悪寒しか感じない。
 そこから口を離すと、腰を持ち上げた。目の前に受け入れる部分が入りそうになり視線を外す。
「ダメだよ、レンレン。そんなことしたら、この子が生まれたらお母さんのエッチな写真見せまくるよ?
「さいってい……」
 言葉では罵りながらも、見ないわけにはいかなくて悔し涙を飲みながらもそこへ戻る。
 ひくひくと蠢く秘孔。中に挿入されることを待っている。
 ブッキーは焦らすように、ゆっくりとそこへ指を挿入した。人肌に温めてあるローションがひたりと触れる。
「ん、うぅ」
 緩やかな侵入に、いつもなら目を瞑って耐えている。だが、それもブッキーに止められている。奇妙な鼓動とともに、そこをまじまじと見つめることへの背徳感が愉悦を運ぶ。
 指は浅いところを恐る恐ると入っていき、少し進んでは出て、しかし完全に出て行ってしまう前にまた入ってくる。もどかしい。
「ぶ、きっ。そこ、ばっか……」
「まーだ」
 拙いおねだりも、あっさりと棄却された。
 もどかしい快感を追おうとすれば、子供にするように尻を叩かれる。
「エッチなお母さん。はしたないことしちゃ、子供がマネするからダメだよ」
「だ、だって。も、う!」
「ダメ」
 涙を滲ませ訴えても、ブッキーは艶然と笑うだけだった。
 何を考えているのか。分からない顔で。どうせその頭の中はひどいことでいっぱいなんだろうけれど。
 指は奥まで進むことなく、中間まで進んだあたりであっさりと抜かれた。いつもなら丹念に解し、早くと腰を振ってもやめないのに。
「ちゃんと見ててね、レンレン」
 ブッキーは、ジーンズの前を寛げる。ジッパーを下げる音とともに、彼の身長には似合わない膨らみが現れる。
 下着ごとジーンズを脱ぎ、ベッドの外へ放る。
 オレの腰を掴み、大きく開く。
「ほーら。入っていっちゃうよ」
「や……」
 それは、一種の恐怖だった。
 肉棒が秘孔の中へ入ろうとしていく。オレは身動ぎ出来ず、嫌だと言うことしか出来ない。
 だけど、胸の内ではそれを欲しがっている自分もいた。その証拠に、そこはひくひくと欲しがっていた。
 そして、俺の中を荒らす。
「あ、あぁああああっ!」
「きっつ! あっは! レンレン、そんなに欲しがっちゃってもう!」
「い、っあ! 嫌ぁ、やだぁ!」
 一気に叩きつけられる。
 子宮さえも抉りそうな、久しく与えられていなかった刺激に仰け反り喘ぐ。
 それをブッキーはにんまりと眺めていた。
「ほら、ちゃんと動いてよ。じゃないと、痕もつかないでしょ? ああ、こっちにつけてあげようか」
「いいっ、あ! や、だめだめぇええ!」
 奥への刺激と同時に、お尻を強く叩かれる。痛いのに、熱を快感と覚えているみたいだった。
「お母さん、ガンバレ」
「ん、ぁああっ。あ、ああ!」
「ガンバレガンバレ」
「いやぁっ。も、いらな、かえすぅうう!」
「カワイイけど、だぁめ」
「あ、はぁあん、……ああああぁあ!」
 それから、本当に痕がついて血が出るまでオレは揺さぶられ続けた。
 途中、帰ってきたイッキとイッチーに見られたなんてことは語りたくない。
「く、ぅっ」
「い、いってぅ、いってぅの! だめぇっ」
     
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