「征くん」
 彼の手は、いつだって優しい。優しすぎるほどに。
「ん、……」
 むず痒い掌。肌を滑る感覚は、触れたその日から変わらない。子供一人産んでも。
 俺と彼降旗光樹が付き合ってから十年。結婚してから五年。子供は五歳。まあ、所謂出来ちゃった婚というやつだ。いつまでもうじうじと俺の立場だなんだと考えて動き出さない彼に焦れて襲い、子供を作り、無理矢理結婚した。
 子供が出来ると、責任をとると言った彼の慌てぶりは今でも記憶に焼き付いている。
「征くん」
 優しいのは、触れる掌だけじゃない。彼の性格もだけれど、声も。眼差しも。
 俺を見詰める目は、気持ちを疑うこともないほど愛を訴えていた。
「んぅっ」
 焦れったいくらい解された、秘所。受け入れることを待ち望んで疼き、蠢く。彼の指を咥え、離さないとはしたなく絡みついていた。
「う、あ、あ……」
 ほんのりとぼやける視界。身体の内側から熱くなるのと反比例して、鮮明さは失せる。
 けれど、中でそろりと忍ぶ指の動きだけは明確になっていった。奥を突くことも戸惑い、進んでいいのかと俺の顔を窺っていることも。
 早く奥に欲しい。奥を突いて、みっともなく喘がせてほしい。恥じらいもなく、無様な姿で喘ぎたい。理性の箍が外れないうちは嬌声一つもあげられないから。

     
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