「そこを退け、黒崎」
「テメエが退け、カミュ」
どうしてこうなった。










神宮寺レン。シャイニング事務所所属のアイドル。スターリッシュをはじめとしたジョーカートラップやシャッフルユニット等、ソロだけでなくユニット活動も頻繁に行っている。
母親譲りの歌唱力とサックスの腕前だけでなく、ファッションモデルとしても注目を集める期待の星である。
シャイニング事務所所属のアイドルの登竜門早乙女学園を卒業し、マスターコースも無事終えた神宮寺レン。現在は都内に居を構え、悠々自適な一人暮らし生活を送っている。
仕事も数が増えてきた。学園時代やマスターコース時代に苦楽を共にした仲間達も同様で、最近は番組で顔を合わせるような日々である。それは互いにいい影響を与え、頑張らなければと奮い立つことが出来た。
しかしながら、久々に顔を合わせる先輩二人に現在進行形で困らされていた。
マスターコース時代にユニットを組んだりと世話になった先輩アイドル。最近ではカルテットナイトとして仕事をするところも見かける。
一人は黒崎蘭丸。黒崎財閥の元御曹司で、財閥解体後は自力で借金を返す日々を送る苦労人である。肉とロックを愛する、動物にだけ優しいと思いきやツンデレである。マスターコース時代は同室の先輩アイドルとして可愛がってくれた。今でも気にしてくれて、神宮寺レンにとっては大好きな先輩の一人だ。
もう一人はカミュ。永久凍土シルクパレスの女王に仕える伯爵家の生まれである。甘味をこよなく愛し、執事キャラと俺様キャラを巧みに使い分けて女性の心を掴んでいる。以前シャッフルユニットを組んだことがあり、それからは同室の後輩だったセシルよりも懐く神宮寺レンを気に入ってくれている。こちらも先輩として大好きな一人だ。
そして、現在神宮寺レンを困らせているのはよりにもよってこの二人である。
収録終わり。神宮寺レンの楽屋を訪れた二人は、どちらが一緒に食事に行くかを言い争っているのだ。
「レン、勿論俺とだよな。マスターコース時代同じ部屋で長い付き合いだったもんな」
「え、あ」
「神宮寺。俺と言え。シャッフルユニットでは濃い付き合いをしたな」
「え、あー、えーと」
二人の言っていることに間違いはない。だが、あちらを立てればこちらが立たず。
二人が大好きな神宮寺レンとしては頭がいたい問題である。
「バカか。たった一日やそこらで何が出来るってんだ」
「この愚民め。無駄に時間を掛ければ良いと思っているから貴様はその程度なのだ」
収録も終わり、後は帰るだけ。ロケも何もないためゆっくり家で寛ごうと思っていた矢先のことである。
二人に挟まれ、逃げたい気持ちも必死に堪えた。
ここでヘタに逃げたらなんかヤバい気がする。
「おい、レン。俺だよな」
「神宮寺。俺を選べ」
矛先がこちらへ向く。
ギクリと身を強張らせた。冷や汗がだらだらと背筋を伝った。
どっちもなし。ってのはダメですか?なんて聞ける雰囲気じゃない。
かと言ってどちらかを選ぶのも躊躇われる。
人生最大の選択肢に、神宮寺レンは内心頭を抱えた。
その時、ノックの音と共に救世主があらわれた。
「レン、入りますよ」
一ノ瀬トキヤだ。このあと収録と聞いている。
「あ、黒崎先輩、カミュ先輩。お久しぶりです。お二人とも揃ってどうされたんですか?」
「トキヤ・・・」
「一ノ瀬」
第三者の登場に、閃光を散らせていた二人は口論を中止する。
一ノ瀬トキヤも二人にとっては可愛い後輩である。ジョーカートラップで共演してから、先輩を立て、アイドルとしてもストイックな姿勢である後輩を可愛がっている。
可愛い後輩の前で口論をするのは気がひけるのだろう。ぐっと口を噤んだ。
「どうしたのです?・・・レン」
「い、イッチィイイイイイッ!」
いた。ここにいた。救世主はここにいた。
「な、なんですかっ。レン!」
神宮寺レンは飛び付いた。
自分よりも五センチくらい小さい身体が、こんなにも頼もしく感じる日が来るなんて!口うるさいだけのオカンじゃなかったんだ!
「」「」「」
     
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