星は、夜に瞬く
「霊夏」
 新しく与えてやった名を呼ぶと、読みかけの本を置いてパタパタと駆け寄ってくる。その姿は宛ら子犬か。
「茶を持って来い」
「はい」
 霊夏が隣の部屋へ駆け込むのを見送って、肘をついた。
 新しい生を受けて、何年の月日が経っただろうか。数えるのは、最初からしていない。
 霊夏は、言葉通り待ち続けている。その姿を保ちながら、待っている。
 悠久の時を生きる道をわざわざ選ぶなんてバカのすることだ。が、それをわざわざ選ばせてやった自分も似たようなものかと思わないでもない。
「さて、これをどうやって教えてやろうか」
 手に取ったのは、一枚の書類。長たらしいプロフィールのようなものが書かれ、右上にデカデカと「終了」のハンコ。
 赤いそれを見た瞬間、あの子犬がどんな反応をするか今から楽しみでならない。
「だが、オレも離してやるつもりはないんでね」
 共に過ごしていくうちに乗り移った情は、あの時の出会いを「最悪な寝起き」から「最高の巡りあわせ」へと変えていた。
「誰が離してやるか」
 にたり、と笑って、これはいい下僕を手に入れたとほくそ笑んだ。
「カイト?」
「ああ、気にするな。それより茶は?」
「どうぞ」
「ああ」
 カイトは、書類を一瞥し、笑みを浮かべた。
     
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