きず
部屋の隅で体育座りをしているように頑なだった。真っ暗な部屋の片隅、誰にも見つけられないすみっこのほうで、顔を上げるのも厭ってぎゅっとかたく指を握っていた。閉じられた門宛ら。
ひとつひとつ、丁寧に、そうっと解いていく。随分根気がいることだった。長い時間をかけてゆうっくりゆうっくり。
いいんですか。
そう聞いたかもしれない。ありきたりなセリフだ。
いいよ。
そう言って、またひとつ、ひとつ。解かれていく。
最後の指が解かれたと同時にぐちゃぐちゃの泣き顔が柔らかな太陽を向いた。
せっかく閉じこもったのに。戻れなくなってしまった。本当にいいんですか。
言いたいことは多かった。何個かそうしようとして、もごもごと口に出る前に躓く。
わかっている。本当はあなたに許してほしかったと。わたしみたいな人間でも、人をーーあなたを好きになってもいいのだと。
きっとあなたもわたしを好きだと、伸ばされた腕が身体を起こす。
ボロボロになって、歩くことも出来ない私の身体を支えて隣を一歩ずつ歩く。ゆうっくりゆうっくり。
そうして、傷付くことを恐れながらそれに傷付いているわたしとあなたはともに傷を付けていった。
手癖で恋に落ちる瞬間
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