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 怖かった。
 この世界に絶望して、もう嫌だ。こんな世界捨ててやると思った。
 だから、死んでやろうと思った。
 腹、首、手、胸。あらゆる死ねそうなところを刺した。
 最初は、怖くてうまく出来なかった。
 その内やり方が分かるようになった。
 死ねた。と、思った。が、死ねなかった。
 目覚めると、涙ぐんだ両親がいて、ここが決して地獄などではないと知らしめていた。
「よかった」
「生きていてくれて、よかった」
「なんであんなことをしたの」
「私達を心配させて」
「もうこんなことしないで」
 両親の言葉に、涙も出なかった。
 退院して、少しも経たないうちにまた同じことを繰り返した。
「なんでこんなことをするの」
「私達を困らせたいの」
 両親はやっぱり泣いていた。
 次第に、言葉は変わっていった。
「お願いだからやめて」
「生きて」
 嘆きは懇願へと変わり、それは容赦なく突きつけた。
 もう両親の言葉ですら響かないことを。
 それが何より悲しかった。
 希望も、絶望もない。
 親とは、最後まで子供を守ってくれる存在だ。
 しかし、最早そうですらないのだと理解した。
 もうダメだ。戻れないのだ。
 父や母の涙すらも胸を通り過ぎて行ってしまう。
 それは、この世界のせいなのか。それとも自分の?
 言い訳でしかないが、自分のせいではない気がした。自分唯一人だけのせいではない。
 では、誰の?
 誰のせいでもない。この世界のせいだ。というのも、なんか違う気がした。



 しいて言うならば、それは――





     
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