自室に入ると、乱暴に布団へとマチカを投げた。
 子供子供した幼い顔は、意味も状況も理解していない。
 ネクタイを緩めた。スーツの上衣もワイシャツも放り、マチカの上にのしかかる。
「あ……」
 刹那、マチカの表情が変わった。
 ずっとあどけない子供だったのに、その瞬間、ぴしりと固まる。
 今更理解したって遅い。
 兵壕は、マチカの着物に手をかけた。
「……おい」
 が、その手は、寸前で止められる。他でもないマチカによって。
「なんて顔してるんだよ」
 マチカは、笑っていた。否。正確には、笑おうとしていた。今にも泣きだしそうなのに、笑おうとしているのだ。
「え……?」
 マチカは、眉を上げる。意味が分からないとでも言うように。
 仕方なく手を引っ込めて、代わりに頬を撫でる。子供のようなあどけない顔から色が失せ、ただでさえない色気がすっかり消え失せている。子供のものでも我慢しようと思ったが、これではやる気も失せるというものだ。
「笑おうとしなくていい」
「え?」
「無理矢理笑われても気持ち悪いだけだ」
 寧ろ、今からさあやろうという時に泣きそうになりながら笑おうとされても萎える。
「泣いて、ませんよ?」
 だが、マチカは頑なだった。
 笑うなと言っても、奇妙に口元を吊りあげようとして、余計おかしいことになっている。
 兵壕は小さく嘆息した。
 これは、相当な面倒を押し付けられたものだ。
「泣かれても面倒だが、そんな顔で笑われるよりかはずっとマシだ」
「泣いてません」
「嘘も」
「だから、泣いてません」
 しまいにはぶんぶんと首を振る。もげるんじゃないかと思うくらい。
 すっかり興が削がれた。面白いガキというだけでやる気になっていたのに。
 兵壕はワイシャツをとり、羽織る。
「ザキを呼ぶ。離れへ帰れ」
「え?」
「やはりお前じゃ無理だな」
 邪魔された代わりにでもなるかと思っていたが、やはり外へ出る必要があるようだった。否。今更外へ赴くのも面倒だ。今日は熱を忘れ、明日にしよう。
 早速明日の予定と照らし合わせていると、スラックスの裾を引かれた。
 兵壕は、もう一度溜息をつく。なんてめんどくさい。
「一体なんだ……」
「え? あ……」
「……お前」
 兵壕は息を飲む。
 本人は気付いていない。自分がどんな顔をしているか。
 笑うこともヘタクソになって、おかしなことになっている。
「え? あー……あー……」
 マチカは取り繕うことも出来ず、それでも笑顔は崩さない。
 兵壕は段々苛立ちが募ってきた。
 人質にもなれないガキが自分を引き留めるなど。剰え、ヘタクソな笑いを見せられたせいだ。兵壕は結論付けた。
 すると、こんなガキに左右されるのもバカらしくなってきて、ならひと思いに犯しつくして見れない顔にしてやろうと思った。
 マチカを布団に押し倒し、裾を開き、肉付きの悪い足を開いた。
 邪魔な下着を脱がせ、指を突っ込もうとした。
 しかし、出来なかった。
「な……」
 兵壕は、瞠目した。
 そこには、あるはずのないものがひっそりと息づいていた。
「おま、え……」
 兵壕と同じ雄の証の奥。小さな蜜壷が眼前に曝け出される。
「お前、これは……」
 それは、雌の証。尻穴でもない。雄を受け入れるための器があったのである。
 兵壕はマチカを見遣る。
 マチカは、それでも笑っていた。ヘタクソな笑顔で。
     
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