11
目覚めたときには、好きな人がいるといい。
抱き締められて、顔とか胸板とかが目の前に広がってて、きゅうって胸が高鳴りたい。
そうしたら、そっと抱き着くんだ。
バレないように、そっと。










「………………」
とは望んでいたものの、これは望んでいなかった。と、蘇我立神はぼやきたくなった。
「おはよう、立神」
シーツから覗く上半身。肘をついて自分をじっと見つめる眼差し。
いつもの温かい笑顔を浮かべていた。
「立神、おはようは?」
いや。違う。立神はすぐさま否定した。
温かい笑みに乗せられた男の色気。上半身は纏っていないことからより増して。
立神は、シーツの中に隠れた。
「ん? 隠れちゃうの?」
しょんぼりとした言い方だったが、声音は楽しそうで、そんな場合じゃないとは思いつつも腹が立つ。
シーツの住人と化そうとしている立神の上に優衣人は乗っかった。温かい重みが背中に重なり、心臓が高鳴る。
「ねえ、立神」
そして、耳元でそっと囁く声。
「恋人になってはじめての朝なのに、おはようも言ってくれないの?」
意地悪だ。どこが温かい人だ。
立神の気持ちなんてお見通しのくせに、掌で弄んで。
「立神」
でも、分からないでもない。
「お、おはよう、ございます」
立神も、おはようって言いたかったから。
ちょこん、と顔を覗かせて立神は優衣人を見上げた。
驚いたような顔をして、それからあの温かい笑顔になった恋人に、立神はほんのりと頬を染めた。
「立神」
優衣人の唇が下りてくる。
立神はぎゅうっと目を閉じて、唇に答えた。
     
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