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「うぜえ」
吐き捨てられたセリフ。
そんな言葉も必死に集めてしまう俺は、間抜けとしか言いようがない。
日常と化した浮気に、今日もまたやめてくれと願った。いつもはいはいと流されたり無視されたりと、一度もまともに聞いてもらったことがなかった。
しかし、今日は違った。それも最悪な方に。
「おまえなんなんだよ」
「な、に……って」
初めて投げかけられた暴言に言葉も紡げないまま、恋人であったはずの男は俺を嫌悪感も露わに見やった。
今までそんな目を向けられたことがなかった。―――違う。一度もまともに見られたことがなかったのだ。
「付き合ってくれって縋り付いてくるから付き合ってやったら、浮気するなだの抱いてくれだの。おまえ何様だよ?」
「何様って……」
「はっきり言って、俺はおまえに全然興味がないわけ。むしろ、口出ししてきてウザくなってきたんだけど」
何を言っているんだろう。
俺は何を言われてるんだろう。
「幼馴染のよしみで付き合ってやったけどもう無理。そもそも男とか論外だろ」
「あき、ひこ……さん」
「分かったらとっとと出て行け。邪魔だ」
俺はわけもわからないまま、彼の部屋から追い出された。
「ま、待って!ねぇ、彰彦さん!彰彦さん!!」
慌てて扉を叩くが、開けてくれる様子はない。
だが、このまま帰ったりしたらそれこそ終わってしまう。
俺は恥も外聞も考えなしに、扉を叩き続けた。
「あ、彰彦さんっ。ごめんなさい、彰彦さん。お、俺、もう何も言わないから。ちゃんと言うこと聞くから。だから、だから……」
「うるせえ!」
しかし、扉の中からは拒絶と、扉を蹴り付ける音しか返ってこなかった。
「あ、きひこ……さん」
     
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