かたり。
大きく差し込んだ光から物音を立てた。眩しさに目をやられながらも、虚とした目を向ける。
やわらかい笑み。微笑み、慈愛のようなそれがそこにはあった。
まじまじと眺めつ、稍あって満足そうにその場を去った。光は徐々に小さくなり、やがてひとつもなくなった。
ここへ来てから何日目になるか。もう数えていない。考えるのもやめた。逃げるのも手放した。
四肢を拘束され、身動きすらままならず、遠くに置かれた飯も手がつけられない。時折忘れかけた頃に思い出したようにして飯を近付けてくれるけれどそれだけ。決して逃がそうとはしない。
家族は心配しているだろう。いつまでも帰らない自分を。友達や、同級生たちは。あいにくとさみしい学校生活は送っていなかったので人並みに心配されてると思うし、会えないことがとてもさみしい。一人暗闇の中でじっとしていることが苦痛でならなかった。
気が狂うほど時間が経って、気が狂いそうになって数えるのもやめて、それから。それから。
ずっとひとり。
暴力はなかった。痛みを覚悟していたけど触れられることすらなかった。酷い場合、貞操の心配もしたけれど、指先ひとつ触れられないくらい近寄らなかった。
自分が何かをするかもしれないと警戒しているのか。
あの光の隙間から顔を覗かせて、ここにいることに安心して笑う。微笑む。そうして光を閉ざす。
彼、からは告白をされた。
まだ普通に生きていた頃のことだ。呼び出された先で、好きです、と一言。
同性同士の恋愛があることは知っていたが、まさか自分が体験するとはおもわず面食らってしまった。なにより、クラスで秀才と名高い彼が自分なんかに頬を染める姿に。
しかし、やはり元より女性を愛していた性分だったため、ごめん、と返すことしかできなかった。
友達や同級生たちに言うこともできず、心にそっと秘めた想いだった。
しかし、数日後。下校中に意識を失ったかと思えば、真っ暗な世界で眼が覚めることになる。夢の続きかと思ったが、何度目を開けても同じ景色だった。心なしか四肢が重たかった。
やがて、光が射し込んだ。それはそれは大きな光だ。
かたり。
隙間から何かが置かれた。
眩しさの中垣間見たのは、数日前に告白して来た彼の深い笑みだった。
それから、ずっとひとりだった。
昨日も一昨日もそうやってずっとかたりと飯だけを置かれたのだろう。あの深い笑みを浮かべる彼に。
どうしてか、それが満足そうな顔にも見えるのは気のせいだろうか。
     
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